OECD石油在庫の過剰感が薄れ始めた点も、足元の原油価格上昇の一因

著者:吉田 哲
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原油反落。ドルインデックスの反発などで。45.10ドル/バレル近辺で推移。

金反発。主要株価指数の反落などで。1,812.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年01月限は14,575元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年01月限は288.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで847.3ドル(前日比11.6ドル拡大)、円建てで2,876円(前日比22円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月26日 19時15分頃 先限)
6,092円/g 白金 3,216円/g
ゴム 232.2円/kg とうもろこし 24,760円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「OECD石油在庫の過剰感が薄れ始めた点も、足元の原油価格上昇の一因」

前回は「“7割経済”というモノサシで、コロナショック後の石油需給を見る」として、新型コロナ感染拡大直前の2019年12月から、2020年10月までの、世界の石油供給量および消費量について、書きました。

今回は「OECD石油在庫の過剰感が薄れ始めた点も、足元の原油価格上昇の一因」として、OECD石油在庫に注目します。

OECD(経済協力機構)は、第二次世界大戦後の欧州の復興を目指し、欧州諸国と米国、カナダで作られたOEEC(欧州経済協力機構)を前身とし、その後も、世界全体の経済発展に資すべく拡大してきました。日本は1964年、欧米諸国以外で初めての加盟国となりました。

現在OECD加盟国は37カ国です。その37カ国のGDPシェアは、2019年時点でおよそ60%です(IMFのデータより筆者推計)。OECDは、先進国の集合体と言えます。

以下のグラフは、OECDの石油在庫と、その過去5年平均、そしてそれらの差を示したものです。先進国らが目先の経済活動を維持するために重要な石油の在庫は、世界の石油在庫の指標として注目されています。

OPECも、このOECD石油在庫を、政策立案のための材料として注目しています。OPECのニュースリリースにも、しばしばOECD石油在庫が登場します。“OECD石油在庫が過剰に積み上がっているため、減産実施が必要だ”、のようにです。

足元の同在庫は、減少しつつある、と言えます。

新型コロナショックを機に、世界経済が一時的に縮小し、石油の消費量が減少したことをきっかけに、在庫は一時、急増しましたが、その後、消費の回復と、供給の減少が同時に起きたことが要因とみられ、在庫が減少に転じています。

同在庫と、OPECのニュースリリースに登場することがある“同在庫の過去5年平均”との差は、縮小傾向にあることから、(絶対水準の他)、過去5年平均との相対評価でも、在庫の過剰感は、薄れ始めていると言えそうです。

このOECD石油在庫の過剰感が薄れ始めている点もまた、足元の原油相場の上昇の一因であると、筆者は考えています。

図:OECE石油在庫 単位:百万バレル


出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。