OPECプラスは、実はがんばっている

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。46.50ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,845.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,880元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年01月限は295.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで784ドル(前日比18.5ドル縮小)、円建てで2,682円(前日比11円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月4日 18時55分頃 先限)
6,166円/g 白金 3,484円/g
ゴム 247.6円/kg とうもろこし 24,730円/t

●WTI原油先物 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「OPECプラスは、実はがんばっている」

前回は「プラチナの一大消費地欧州で、新型コロナの感染状況に改善の兆し」として、プラチナの一大消費地である欧州で、新型コロナの感染状況が、改善しつつあることについて、書きました。

今回は「OPECプラスは、実はがんばっている」として、昨晩行われた、OPEC・非OPEC閣僚会議について、書きます。

報じられているとおり、OPECプラスは、12月3日(木)に開催された、第12回OPEC・非OPEC閣僚会議で、2021年1月以降の減産幅を、現行よりも日量50万バレル縮小した日量720万バレルとすることを、決定しました。

5月に再開した協調減産の規模の削減量、日量970万バレル(2020年5月から7月)、日量770万バレル(8月から12月)、今回決定した2021年1月以降の削減量である日量720万バレルは、かつてのOPECプラスの削減量に比べれば、とても大きな規模です。

現在の協調減産が始まったのは(2020年4月に一時中断)、2017年1月で、その時の削減量は日量116万バレルでした。2020年5月の再開後の減産の規模は、その6~8倍です。

あまり報じられていませんが、現在のOPECプラスは、当人たちとしては、以前に比べ、かつてない程の削減を実施しているわけです。日量50万バレル、削減量を縮小したとはいえ、大規模な減産であることには変わりはありません。

OPECプラスの配下組織であるJMMC(共同閣僚監視院会)は、OPECプラス全体の2020年10月の減産順守率について、減産順守の目安である100%を超えたとしています。かつてない規模の減産を、OPECプラス全体として、順守しているのです。

また、削減量だけではなく、減産再開後の5月以降に導入された“埋め合わせ”も、以前の減産を異なる要素です。

協調減産実施にあたり、国ごとに定められた削減量に対し削減できなかった分(減産未達分)を、通常の削減量に上乗せをして削減をする“埋め合わせ”の条項が盛り込まれています。

2017年1月から中断するまでは、余裕をもって減産をしている国が、余裕のない国の分まで削減をし、“肩代わり”をする場面が散見されていましたが、現在は“肩代わり”せず、参加国が厳格に、個々に課された削減量を削減することが求められています。

今回の会合で、1月以降、毎月会合を開催し、“埋め合わせ”の状況を監視することを決めました。
(毎月会合を開催するといっても、実際のところ、今年5月の協調減産再開以降は、ほぼ毎月、JMMC(共同閣僚監視委員会)を開き、減産順守率を公表し、時には、定められた削減量を削減できなかった国の名前を公表してきました)

OPECプラスは、かつてない規模の減産を実施することを公言し、実際にそれを遵守し、かつ、個別の国ごとに遵守を徹底することを、自らに課しているわけです。

このように考えれば、日量50万バレル削減量が縮小したからといって、悲観的になることは、筆者はないと考えます。実際のところ、会合後の原油相場は、上値を伸ばしています。

今回の会合については、例えば、サウジの立ち位置、ロシアの影響度など、さまざまな話題があります。次回以降、これらについて書きます。

図:OPECプラスの協調減産における削減量


出所:OPECの資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。