新型コロナの変異種報道で原油よりも下落したのは!?

著者:吉田 哲
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原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。47.20ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,875.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は13,905元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年02月限は295.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで862.85ドル(前日比1.75ドル拡大)、円建てで2,902円(前日比37円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月22日 18時51分頃 先限)
6,236円/g 白金 3,334円/g
ゴム 229.3円/kg とうもろこし 25,190円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「新型コロナの変異種報道で原油よりも下落したのは!?」

前回は「OPECプラスの減産はまだまだ続く。減産を大々的にけん制する人もいない」として、OPECプラスの原油生産量について書きました。

今回は、「新型コロナの変異種報道で原油よりも下落したのは!?」として、幅広い銘柄が下落した12月21日月曜日の、原油や複数の主要株価指数などの騰落率に注目します。

以下のグラフのとおり、月曜日の原油市場の終値は、金曜日の終値に比べて2.6%、下落しました。

この2.6%は、12月に入りさらに騰勢を強めたビットコインよりもやや大きく、新型コロナの変異種が確認されたイギリスの株価指数FTSE100や、同じ欧州のドイツの株価指数のDAXよりも小さい値です。特別に原油の下落率が高いとは言えません。

また、昨日の月曜日の値動きを含めた、この1週間の騰落率を見てみると、原油はプラスです。1週間前にくらべて足元の価格は、若干高い、わけです。

原油以外の銘柄をみても、ビットコインや銀、上海総合、金、銅、ナスダックなども、プラス圏で推移しています。新型コロナの変異種をきっかけに、幅広い銘柄で大幅下落が起きているわけではない、と言えます。

原油市場には、上昇要因と下落要因が、ともに存在していると考えられます。昨日は急落したものの、まだ1週間前の水準を維持し、この数時間、反発していることを考えれば、上昇要因と下落要因の影響力は、拮抗しつつあると考えられます。

特に目立っているのは、OPECプラスの原油生産量が低水準であること、米シェール主要地区の原油生産量が減少傾向にあることなどの原油固有の上昇要因と、新型コロナの感染拡大が止まっていないことなどの周辺材料の下落要因です。

昨日月曜日、原油相場は新型コロナの変異種の件で反落しましたが、足元、昨晩の安値から、反発してきていることから、原油固有の上昇要因が意識され、同時に、周辺材料の下落要因の影響力が低下しつつあるとみられます。

今後も、引き続き原油固有の上昇要因が存在し続け、同時に、各国の景気対策が進んだり、ワクチンが広く一般に使用されるようになったりして、株価の反発が目立つようになれば、原油相場は50ドルを目指す基調に戻ると考えています。

図:12月18日(金)から12月21日(月)までの主要銘柄の騰落率


出所:各種情報源より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。