2021年の脱炭素は、欧州の内燃機関を持つ自動車の存在を温存する一因

著者:吉田 哲
原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。50.98ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,918.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は14,875元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年02月限は335.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで808.4ドル(前日比10ドル拡大)、円建てで2,754円(前日比13円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月7日 19時13分頃 先限)
6,397円/g 白金 3,643円/g
ゴム 246.6円/kg とうもろこし 26,860円/t

●大阪プラチナ先物(期先) 日足 (単位:円/グラム)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「2021年の脱炭素は、欧州の内燃機関を持つ自動車の存在を温存する一因」

前回は、「2021年の脱炭素は、車1台の排ガス浄化装置向け貴金属消費を増やす一因」として、“2021年の脱炭素”とプラチナの関りについて、筆者の考えを書きました。

今回は、「2021年の脱炭素は、欧州の内燃機関を持つ自動車の存在を温存する一因」として、前回に続き、黎明期にある2021年の“脱炭素”とプラチナの関りについて、筆者の考えを書きます。

欧州では、“脱炭素”に寄与する考え方である、カーボンニュートラル(炭素中立)の議論が進行しています。これは、社会全体で二酸化炭素の排出量を評価する考え方です。

例えば、これまで電気自動車(EV)は環境に配慮したクリーンな自動車だと言われてきましたが、その動力源となる電力は、まだ多くの国で、化石燃料を燃やし、二酸化炭素を排出しながら作られています。

欧州委員会は、“社会全体”で二酸化炭素の排出量を低減するため、昨年(2020年)、水素社会を模索すると明言しました。

このことをきっかけに、既存の自動車業界を中心に、水素と二酸化炭素を合成したeFuel(合成液体燃料)の研究が本格化しました。日本でも、トヨタやホンダなどが、研究に着手したと報じられています。

カーボンニュートラルでは、二酸化炭素と水素から燃料を作ることで、二酸化炭素を吸収したとみなします。

今のところeFuelは既存の化石燃料に配合することが想定されているため、配合後の燃料を使って走行した自動車が排出した二酸化炭素は、燃料を作る際に吸収した二酸化炭素によって、一部が相殺されたとみなします。

eFuelはまだコストに見合わないとする報道もありますが、二酸化炭素を吸収すること以外にも、ガソリンスタンドなどの既存のインフラを使うことができる、内燃機関(エンジン)を製作・開発する上で培ったこれまでのノウハウを生かすことができる、など、メリットは複数あります。

このため、欧州のカーボンニュートラル策の一環であるeFuelは、同地域の内燃機関を持つ自動車の存在を温存する役割があると、筆者は考えています。

“脱炭素”を叫ぶ声が大きくなればなるほど、ガソリンや軽油、それらを燃料とする内燃機関を持つ自動車、そして、それらの自動車の排ガス浄化装置に用いられる貴金属の消費が減少するという連想が働きやすくなるかもしれませんが、実際のところは、黎明期でもあり、2021年の“脱炭素”がプラチナの消費を急減させることはないと筆者はみています。

むしろ、“脱炭素”の流れもあり、環境規制がさらに厳しくなる見通しが示され、(前回書いた)増加傾向にある欧州の自動車1台あたりの排ガス浄化装置向けのプラチナ消費がさらに増加する、さらにはeFuelの普及によって一定程度、内燃機関を持つ自動車の存在が温存される可能性があることなどから、2021年は、プラチナ相場に上昇圧力がかかりやすくなると、筆者は考えています。

図:NYプラチナ先物(期近 月足 終値) 単位:ドル/トロイオンス


出所:ブルームバーグより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。