[Vol.920] “シェールが減る”。どの地区で減っているのか?

著者:吉田 哲
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原油反落。米国の主要株価指数の反落などで。51.79ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,850.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,380元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年03月限は332.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで745.75ドル(前日比7.85ドル拡大)、円建てで2,545円(前日比9円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月22日 20時7分頃 先限)
6,180円/g 白金 3,635円/g
ゴム 238.0円/kg とうもろこし 26,960円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「“シェールが減る”。どの地区で減っているのか?」

前回は、「“シェールが減るから米国全体が減る”が鮮明に」として、1月19日(火)に、EIA(米エネルギー省)が公表した、米シェール主要地区における各種データから、主要7地区の原油生産量(合計)の動向について述べました。

今回は、「“シェールが減る”。どの地区で減っているのか?」として、前回に関連し、1月19日(火)に、EIA(米エネルギー省)が公表した、米シェール主要地区における各種データから、地区別の原油生産量の動向について述べます。

EIAが提唱する米シェール主要地区は、全米に7つあります。

原油生産量が多い順に(2020年12月時点)、パーミアン(主にテキサス州)、バッケン(主にノースダコタ州)、イーグルフォード(テキサス州)、ナイオブララ(ワイオミング州など)、アナダルコ(主にオクラホマ州)、アパラチア(ペンシルベニア州など)、へイネスビル(ルイジアナ州など)です。

下図のとおり、主要7地区のうち、パーミアン地区の原油生産量が突出して多いことが分かります。7地区の56.4%、米国全体の39.6%を占めています。(2020年12月時点)

7地区の中で最も面積が広いだけでなく、WTI原油の生産地区に程近く(一部は重複している可能性も)、もともとインフラの敷設が進んでいたとみられること、そしてそのインフラを敷設し、活かすだけの人的、社会的リソースがあったことが、要因と考えられます。

パーミアン地区の原油生産量は、2020年12月時点で、日量435万バレルです。参考までに、同じ2020年12月時点のイラク(OPEC13カ国中2位)の原油生産量は日量384万バレルです。

油種が同一ではないため、単純比較は難しいですが、数字上、パーミアン地区は、OPEC2位を上回る、世界屈指の生産地区と言えます。

とはいえ、2020年3月に発生した新型コロナショックを機に、原油価格の急落低迷が数カ月間続いて、高コスト体質の生産者が退場を余儀なくされました。

また、新型コロナの影響で、世界の石油消費が一時的に急減したり、バイデン氏が石油の使用を推奨したトランプ氏と反対の姿勢を鮮明にして選挙戦を戦ったりしたため、原油生産の必要性の低下が示唆されました。

このような時期を経て、同地区の原油生産量は減少し、そして今もなお、回復途上の状況にあります。

他の地区も同様です。シェール主要地区の原油生産量の減少(≒米国全体の原油生産量の減少)は、最主要地区であるパーミアン地区の原油生産量の減少が主因であり、そしてその他の地区の減少が、それに輪をかけていると、言えます。

バイデン政権が正式に発足しました。パリ協定復帰の大統領令への署名も済んでいます。シェールを含む、米国の石油業界はどこに向かうのでしょうか。注意深く、観察したいと思います。

図:米シェール主要地区の地区別の原油生産量 単位:千バレル/日量


出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。