[Vol.923] バイデン政権が与える、トウモロコシ相場への影響

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。53.05ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの低下などで。1,847.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は14,310元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年03月限は335.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで748.8ドル(前日比5.3ドル拡大)、円建てで2,553円(前日比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月27日 17時18分頃 先限)
6,178円/g 白金 3,625円/g
ゴム 227.4円/kg とうもろこし 27,510円/t

●WTI原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「バイデン政権が与える、トウモロコシ相場への影響」

前回は、「バイデン氏は、ブレント原油の指標性を向上させる!?」として、WTI原油先物とブレント原油先物の出来高について述べました。

今回は、「バイデン政権が与える、トウモロコシ相場への影響」として、バイデン政権とトウモロコシ相場について書きます。

先週、バイデン氏は米大統領に就任してすぐに、数十本の大統領令に署名しました。もともと選挙戦から明言していた、パリ協定への復帰や、北米の石油パイプラインの建設許可取り消し、新型コロナ対策などに関する内容です。

その中の一部は、トランプ氏の前の政権であるオバマ政権への回帰、という意味があると考えられます。パリ協定に賛同したり、石油パイプラインの建設を許可しなかったりした、オバマ民主党政権時代に、です。

オバマ政権時、エネルギーの安全保障、環境配慮という側面から、主にトウモロコシ由来のバイオ燃料である、バイオエタノールの生産・消費が急増しました。筆者はこの点に、バイデン氏が回帰する可能性があると、考えています。

トランプ政権時は、10%以上、ガソリンに添加できない“ブレンドの壁”や、石油業界への配慮、ガソリン消費減少などで、バイオエタノールの生産・消費は頭打ちになりました。

しかし、クリーンエネルギー策を掲げ、石油業界と一線を画すことができる、バイデン政権では、15%まで添加できるようにする議論が進展し、再度、生産・消費が増加する可能性があると考えています。15%のエタノールを添加したE15の通年販売が許可された場合、大きく2つ、影響があると考えています。

1つ目は、米国国内の農業の振興です。トウモロコシの需要が増加することが想定され、それにより、生産者である農家の影響力が増し、市場に農家の意向が反映しやすくなると、考えられます。

もう1つが、ガソリン消費の一定量の温存です。電気自動車が台頭しつつあり、ガソリン需要が減少するとみられていますが、現状のE10でもそうですが、バイオ燃料を使用するということは、残りをガソリンで賄うことを意味します。E15であれば、残りの85%は、ガソリンですので、バイオ燃料の生産・使用は、ガソリンの消費をゼロにしない、一定量、消費を温存する要因になります。

E15が許可されれば、この60年間で2度発生した、“水準の切り上げ”が発生する可能性があると考えています。また、主要生産国において供給障害が発生した場合、短期的に大きく上値を伸ばす可能性があるとみています。

現在、1ブッシェルあたり5ドル近辺で推移していますが、E15起因の水準の切り上げ、と供給障害起因の散発的な上昇がともに発生すれば、過去の高値である7ドルから8ドルに達する可能性があると、現状では考えています。

図:米国で高エタノール(E15)通年販売が許可された場合に想定される影響


出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。