[Vol.924] 分断が生んだ大統領は、分断をなくすことができるか?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米国の主要株価指数の反発などで。52.80ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,839.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,150元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年03月限は333.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで769.05ドル(前日比3.15ドル拡大)、円建てで2,637円(前日比18円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月28日 20時25分頃 先限)
6,182円/g 白金 3,545円/g
ゴム 231.0円/kg とうもろこし 27,210円/t

●NY金先物(期近) 日足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「分断が生んだ大統領は、分断をなくすことができるか?」

前回は、「バイデン政権が与える、トウモロコシ相場への影響」として、バイデン政権とトウモロコシ相場について書きました。

今回は、「分断が生んだ大統領は、分断をなくすことができるか?」として、昨年行われた米大統領選挙において、どの候補者がどれだけ都市部で勝利したのかに注目します。

以下の資料は、2020年11月3日(火)に行われた米大統領選挙で、人口15万人以上の都市において、バイデン氏が勝利した都市の数とトランプ氏が勝利した都市の数です。

人口15万ほどで、日本人に比較的なじみがある都市と言えば、ミシシッピ州の州都で、「魂の宿る町」、ブルースの発祥の地とされるジャクソン(約16万人)、2002年に冬季オリンピックが開催されたユタ州のソルトレイク(約20万人)、などがあります。

日本で言えば、千葉県浦安市(約16万人)、長野県上田市(約15万人)、茨城県ひたちなか市(約15万人)、兵庫県川西市(約15万人)、などです。

“都市部と郊外”という点で、2020年の大統領選挙を振り返った時、資料のとおり、圧倒的に都市部でバイデン氏が優勢だったことがわかります。15万人を超える人口を有する都市の、およそ87%で、バイデン氏が勝利しました。

また、バイデン氏が勝利した州でみると、人口15万人を超える都市のおよそ97%でバイデン氏が勝利、トランプ氏が勝利した州でみても、およそ74%でバイデン氏が勝利しました。バイデン氏は都市部でほとんど勝った、トランプ氏は都市部でほとんど勝てなかった、と言えます。

例えば、トランプ氏が勝利した大票田であるテキサス州では、ヒューストン(約220万人)、サンアントニオ(約154万人)、ダラス(約126万人)、オースティン(約92万人)、フォートワース(約90万人)、エルパソ(約68万人)、アーリントン(約39万人)と、同州の人口上位7都市は、すべてバイデン氏勝利でした。

“民主党は都市部で有利”という話はあるものの、昨年の選挙では、有利というよりも“圧勝”だったわけです。

とはいえ、トランプ氏は同選挙で、米国全体のおよそ47%にあたる7,422万票を獲得しました。ではトランプ氏はどこで、半数近い票を獲得したのでしょうか。他でもない、都市部以外の郊外です。

都市部で圧勝したバイデン氏、郊外で半数近い票を集めたトランプ氏。2020年の米大統領選挙は、都市部と郊外の“分断”が鮮明になった選挙だったと言えます。この点より、バイデン氏は、“分断”から生まれた大統領だと、言えると筆者は考えています。

就任演説で、壊された民主主義を立て直す、失われた結束を取り戻す、と繰り返したことは、バイデン氏が、分断を糧に誕生した大統領だということを自認し、仕事をやり上げることの難しさを感じていることの表れだと、感じます。

“分断”は有事のムードの火種になりかねません。金(ゴールド)相場の動向を考える上でも、バイデン大統領の出自は一定の留意が必要だと、筆者は考えています。

図:2020年11月3日行われた米大統領選挙における、人口15万人以上の都市の候補者別勝利数(筆者推定)
※人口は2019年時点の推定値を参照 ※人口15万人以上の都市は各種要件に基づき選定


出所:米国勢調査局(U.S. Census Bureau)およびAP通信のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。