[Vol.928] “脱炭素”が銀の消費量を増加させる

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。55.22ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反発などで。1,836.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,300元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年03月限は347.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで734.1ドル(前日比5.05ドル拡大)、円建てで2,535円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月3日 19時8分頃 先限)
6,210円/g 白金 3,675円/g
ゴム 233.0円/kg とうもろこし 27,380円/t

●NY銀先物(期近) 日足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「“脱炭素”が銀の消費量を増加させる」

前回は、「米国個人投資家の共闘で銀価格上昇」として、足元の銀価格の上昇の一因とされる、米国の個人投資家の「共闘」について書きました。

今回は、「“脱炭素”が銀の消費量を増加させる」として、足元の銀価格の上昇の一因とされる、米国の個人投資家の「共闘」について書きます。

世界的な銀の調査機関であるThe Silver Instituteの統計によれば、銀の需給バランスは、近年、均衡しつつあります。供給から消費を差し引いた需給バランスは、2017年をピークに供給過剰の度合いが低下しています。

需給バランスを決定する要素は、供給量と消費量の2つです。銀においては、近年、消費はほぼ横ばいで、供給が減少傾向にあります。新型コロナの感染拡大が起きた2020年、消費が減少する懸念があったものの、現段階の見通しでは、大きな減少にはならず、ほぼ横ばいとみられています。

消費量が近年、ほぼ横ばいなのは、電子部品などの産業用(太陽光発電装置向けを除く)が減少する中、投資用と宝飾用、太陽光発電装置向け(太陽光パネル表面の電極部分に用いられる)の消費が増加しているためです。以下のグラフは、太陽光発電装置向けとインドの宝飾消費の推移を示したものです。

近年、特にこの2つの分野の消費量の増加が目立っています。太陽光発電装置向けは、世界的に環境に配慮するムードが高まっていること、インドの宝飾需要は、金(ゴールド)よりも同じ金額で購入できる量が多い点に関心が集まっていることなどが、増加の要因とみられます。

上記2つの分野による消費量は、2019年時点で、太陽光発電装置向けは産業用消費の24%、全消費の10%、インドの宝飾消費は宝飾消費全体の34%、全消費の7%です。全消費の17%を占めるこれら2つの分野は、目下、成長中の消費分野であり、今後も増加が期待されます。

太陽光発電装置向けは、長期的な世界全体のテーマである“脱炭素”を推進するための重要なカギになると考えられます。このため、同消費は特に、長期的に増加する可能性があります。

図:太陽光発電装置向けとインドの宝飾消費量 単位:トン


出所:The Silver Instituteのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。