[Vol.929] 銀は、短期も面白いが長期も面白い

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米国の主要株価指数の反発などで。56.16ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,811.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年05月限は14,615元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年03月限は357.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで723.2ドル(前日比0.4ドル拡大)、円建てで2,506円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月4日 20時20分頃 先限)
6,143円/g 白金 3,637円/g
ゴム 235.4円/kg とうもろこし 27,850円/t

●NY銀先物(期近) 月足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「銀は、短期も面白いが長期も面白い」

前回は、「“脱炭素”が銀の消費量を増加させる」として、足元の銀価格の上昇の一因とされる、米国の個人投資家の「共闘」について書きました。

今回は、「銀は、短期も面白いが長期も面白い」として、長期的視点で見た、銀相場の注目点について書きます。

銀の生産(鉱山生産)面に注目します。以下のグラフは、銀の主要地区別の鉱山生産量の推移です。中南米の鉱山生産量の減少が目立っています。

中南米の主要鉱山生産国である、ペルー、チリ、ボリビアの生産量が減少しているためです。

世界全体で見た生産シェアは、ペルーが16%、チリが5%、ボリビアが4%で、3カ国で世界のおよそ4分の1を生産しています。(2019年時点)

ペルーは2017年から、チリとボリビアは2014年ごろから、減少傾向にあります。

これらの国でも、足元、新型コロナの感染拡大が起きています。感染拡大の観点から、生産量がすぐさま回復することは、考えにくいと筆者は感じています。

前回書いたとおり、銀の消費量は、世界的な“脱炭素”ブーム起因の太陽光発電装置向け消費の増加や、インドの宝飾向け消費の増加によって、一定水準に保たれています。

世界的な銀需給の調査機関である、The Silver Instituteは、コロナ禍の2020年の銀消費は全体として、2019年並みになると見通しています。

そして今回述べたとおり、鉱山生産においては、もともと鈍化傾向にあり、新型コロナの感染拡大も相成り、目先すぐに回復しない可能性があります。

消費と生産で起きていることはともに、銀価格を今後、長期的に押し上げる要因になると、筆者は考えています。

米国の個人投資家の「共闘」などなくても、銀相場は長期的視点で価格上昇が望める、面白い銘柄だと思います。

短期的な価格上昇は耳目を集めるきっかけになりますが、銀は実は長期的視点で見守る銘柄なのではないでしょうか。

図:世界の銀の鉱山生産量 単位:トン


出所:The Silver Instituteのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。