[Vol.934] コロナ禍で貴金属市場に自我が芽生える!?

著者:吉田 哲
原油反落。米国の主要株価指数の反落などで。57.78ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,816.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 春節のため2月17日(水)まで休場。

上海原油(上海国際能源取引中心) 春節のため2月17日(水)まで休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで580.35ドル(前日比0.55ドル拡大)、円建てで2,069円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月12日 19時7分頃 先限)
6,154円/g 白金 4,085円/g
ゴム 238.5円/kg とうもろこし 28,000円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「コロナ禍で貴金属市場に自我が芽生える!?」

前回は、「貴金属市場の“定石”の由来」として、4つの貴金属の値動きの傾向における、“定石”について考えました。

今回は、「コロナ禍で貴金属市場に自我が芽生える!?」として、コロナ禍ゆえ、貴金属市場の“定石”と“定石外”の両方を意識することが必要であることついて述べます。

前回述べたとおり、貴金属の価格動向に注目する際は、原則として定石に留意しておく必要がありますが、状況によっては、“定石”が価格動向の主要な傾向でなくなる場合があり、注意が必要です。

現在はコロナ禍です。コロナ禍では、“定石外”を想定しなくてはなりません。コロナ禍では、株と金が相関関係になる、金と銀との相関関係や、プラチナやパラジウムと株の相関関係が崩れることを、常に想定しておかなければならないと、筆者は考えています。

以下の図のとおり、定石外が発生する背景に、金融緩和と、脱炭素ブームが挙げられます。

新型コロナの感染拡大で負った経済的なダメージを回復させるため、“銀行の銀行”とよばれる中央銀行(日本であれば日本銀行、米国であればFRB(米連邦準備制度理事会)など)は、国債などを買い入れて、社会に資金を供給し続けています。また、目標金利を低水準で維持しています。

また、世界は空前の脱炭素ブームです。①大衆の心のよりどころ、②リーダー達の支持を集めるための手段、③企業におけるコロナで負った経済的ダメージを回復させる手段、などのためにブーム化している脱炭素もまた、金融緩和と同様、貴金属市場に“定石外”をもたらす要因になり得ます。

図のとおり、金融緩和は、金(ゴールド)と株式の上昇要因になり得ます。また、脱炭素は、銀とプラチナの上昇要因になり得ます。

金融緩和と脱炭素という2大テーマは、本来、別々の文脈で議論されるため、金融緩和がさらに進んで金と株が上昇することと、脱炭素が進展して銀とプラチナが上昇することは、根本原因は別と解釈することになります。

これまで、金と銀、そしてプラチナとパラジウムは、それぞれ歩調を合わせて動くのが“定石”だったわけですが、金融緩和と脱炭素が進展すれば、金は金の、銀は銀の、プラチナはプラチナの都合で、価格が動く場面が増えると、考えられます。プラチナがプラチナの都合で動けば、プラチナとパラジウムが連動する“定石”も崩れると、考えられます。

新型コロナの感染拡大を起点とした金融緩和の進展と脱炭素ブームが与える、貴金属市場への影響は、“定石外”の発生、いわば、貴金属銘柄間のデカップリング(2つの値動きが連動しなくなること)の発生だと、筆者は考えています。

貴金属市場の“定石”が全く通じなくなるわけではありませんが、コロナ禍ゆえ、“定石外”が発生する頻度が高まる可能性がある点を、強く、心にとめておく必要があると思います。

コロナ禍で、貴金属たちが自我に目覚め、定石外の路線をたどる可能性が高まっています。“定石”から離れて、一度、頭をゼロの状態にして、改めて、“現在の”貴金属相場を見てみてください。きっと、深いレベルで、貴金属相場の面白さに、気が付くと思います。

図:コロナ禍における、金融緩和と脱炭素ブームが与える貴金属市場への影響


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。