[Vol.936] “環境・緩和・投機”、複合要素でプラチナ上昇

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米国の主要株価指数の反落などで。59.70ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,823.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)春節のため2月17日(水)まで休場。

上海原油(上海国際能源取引中心)春節のため2月17日(水)まで休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで506.5ドル(前日比57.7ドル縮小)、円建てで1,801円(前日比26円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月16日 18時48分頃 先限)
6,185円/g 白金 4,384円/g
ゴム 255.5円/kg とうもろこし(現時点でまだ出来ず)

●NYプラチナ先物(期近) 月足 (単位:ドル/トロイオンス)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「“環境・緩和・投機”、複合要素でプラチナ上昇」

前回は、「先週(2月5日~12日)は、プラチナが大幅上昇」として、先週1週間の各ジャンルの主要銘柄の騰落率を確認しました。

今回は、「“環境・緩和・投機”、複合要素でプラチナ上昇」として、足元のプラチナ価格の上昇について、要因やポイントについて、筆者の考えを述べます。

以下のグラフは、このおよそ1年間のNYプラチナ価格の推移を示しています。

新型コロナ・ショックで下落した後、米国などの主要国で金融緩和が始まり、景気回復期待が高まったこと、貴金属のリーダー的存在である金(ゴールド)が騰勢を強めたこと、期待先行相場“バイデン・ワクチン”相場でさまざまな懸念の低減と期待の増幅が同時に発生したことなどで、上昇する場面が散見されました。

そして、足元、今月(2月)に入り、さらに騰勢を強めています。

2月に入ってからの急上昇については、鉱山生産の70%強を占める南アフリカで供給懸念が発生している、株価が上昇しており産業用の用途の割合が比較的高いプラチナの消費が増加する期待が高まっているなど、単一あるいは少数の要因だけがきっかけではない、と筆者は考えています。

“環境・緩和・投機”などの、複数の要素をきっかけとした複数の上昇要因が、複合的に絡んでいる、と解釈する方が、自然だと筆者は思います。足元のポイントとなる材料を、短期と中期に分けて分類をすると、以下のようになります。

足元のプラチナ価格の上昇要因(一例)
[短期(数日~数週間単位)]
・投機資金の流入
・株価の急反発(米個人投資家の「共闘」による騒動後)

[中期(数カ月単位)]
・主要生産国の南アフリカにおける供給障害 (同国の生産シェアは70%超)
・金融緩和起因の株高による景気回復期待増幅 (プラチナ消費のおよそ70%は産業用)
・“脱炭素”ブームによる新需要拡大期待

2月に入って発生したプラチナ価格の急上昇は、短期的な上昇要因が発生したことが直接的な材料と言えるものの、もともと底流していた中期的な上昇要因があったからこそ発生した、と言えると思います。中期的な上昇要因がなければ、ここまでの規模の急上昇は発生していなかったと、筆者はみています。

次回以降、2月に入って発生したプラチナ価格の急上昇の直接的な材料とした、短期的な上昇要因とみられる投機資金の流入について述べます。

図:NYプラチナ先物の推移(中心限月 日足 終値) 単位:ドル/トロイオンス


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。