商品市場は歴史的大底確認

著者:菊川 弘之
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 昨年史上最高値を更新した金相場は米金利上昇に上値を抑えられているが、「底を打った相場は天井を打つまで高い」との相場格言通り、コロナショックで大底を確認した商品相場は、長期的には歴史的な大天井を確認するまでは、押し目買い基調を辿りそうだ。

 景気回復による金利上昇は株高と共に進む「良い金利上昇」だが、これまでは景気回復期待を反映した期待インフレ率の上昇が中心だったのが、足元では実質金利が大きく上昇、PER(株価収益率)を低下させるような要因にもなりうる「悪い金利上昇」が意識され始めている。

 今週は雇用統計を始めとした米マクロ経済指標の好転が予想される中、株価が落ち着きを見せ「良い金利上昇」が再開するのか、それとも株価調整が大きくなり「悪い金利上昇」に転じるのか、短期的には注意点だ。

 バイデン政権は、大型の追加経済対策をまとめる方向で、コロナ対策として、全国民に1400ドルずつ配る意向だ。最低賃金も引き上げる方向だが、これらは個人消費商品価格の上昇を引き起こし、インフレを加速させる。

 また、世界的滞船で、コンテナ船運賃は1年前と比べて、極東と欧州間運賃が10~15倍になっている。コンテナ使用料も高騰しており、春から始まる米国の天候相場で、危機的な在庫率の穀物相場が異常気象に見舞われたりすると、夏場には一般メディアでも、食料危機やインフレの文字が飛び交うだろう。

 インフレが進むとFRBも金融緩和引き締めに向かわざるを得なくなる。商品市場が上昇傾向を強める中、中長期的にはどこかの段階で、FRBにも制御不能な「悪い金利上昇」が起きれば、金相場は本格的に買われることとなるだろう。


 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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