[Vol.962] 原油市場の材料の全体像を確認

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。60.93ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,736.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,125元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年05月限は383.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで556.35ドル(前日比2.25ドル拡大)、円建てで1,988円(前日比4円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月25日 18時15分頃 先限)
6,075円/g 白金 4,087円/g
ゴム 250.3円/kg とうもろこし 29,750円/t

●NY原油先物(期近) 日足 (単位:ドル/バレル)


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油市場の材料の全体像を確認」

前回は、「石油市場はこの数カ月間“供給不足”」として、世界の石油市場の需給バランスを確認しました。

今回は、「原油市場の材料の全体像を確認」として、原油市場におけるさまざまな材料を俯瞰(ふかん)します。

以下のとおり、原油市場に関わる材料を、“原油固有”、“周辺材料”に分けた上で、それぞれを上昇・下落要因に分けます。また、それぞれの材料が、データが示す“実態”なのか、未実現の事象である“思惑”なのか、にも留意します。

昨日報じられたスエズ運河(地中海と紅海を結ぶ世界屈指の航路の要衝)でのタンカー座礁による供給障害は、今のところ、実際に障害が起きているか不明です。供給障害が起きる可能性があるものの、まだ実態がわからないため、“データが示す正の実態”には含めていません。

原油相場の足元の上昇は、プラスの実態とプラスの思惑による上昇圧力が、マイナスの実態とマイナスの思惑による下落圧力を凌駕(りょうが)しているために起きていると言えます。

原油市場には、上昇・下落、ともに材料が存在し、それぞれの影響力が相殺されていると考えられます。(価格が上昇しているからといって、上昇要因のみが存在しているわけではありません)

次回以降、これらの材料の中で需給バランスを引き締めている(供給不足にしている)大きな要因であり、“プラスの実態”の大きなテーマである供給減少要因を確認します。米シェールの回復の鈍さと、OPECプラスの大規模な減産継続、です。

図:足元の原油市場の変動要因(固有+周辺)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。