[Vol.963] 米シェール生産回復鈍化中

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。59.70ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,725.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年05月限は14,120元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年05月限は384.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで567.3ドル(前日比3.6ドル縮小)、円建てで2,015円(前日比20円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月26日 19時37分頃 先限)
6,085円/g 白金 4,070円/g
ゴム 249.5円/kg とうもろこし 29,680円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米シェール生産回復鈍化中」

前回は、「原油市場の材料の全体像を確認」として、原油市場におけるさまざまな材料を俯瞰(ふかん)しました。

今回は、「米シェール生産回復鈍化中」として、世界の石油の需給バランスを引き締めている要因とみられる、“米シェールの回復の鈍さ”と“OPECプラスの大規模な減産継続”のうち、前者について書きます。

米シェール業界では、2020年3、4月の原油価格の急落により、高コスト体質の生産者の破綻が相次ぎました。その後、原油価格は回復したものの、この破綻を機に、米シェールの生産力が鈍化したと考えられます。

今年2月に発生したテキサス州など米国南部で発生した大寒波、それによる大停電の影響も大きかったわけですが、実際にはそれ以前から、米シェールの生産力は鈍化していたと考えられます。

また、掘削済井戸数、仕上げ済井戸数は、同地区の新規油井からの原油生産量に直結する指標ですが、いずれも、昨年春の原油価格の急落による急減後、回復途上にあります。

これらの指標の鈍化は、新規油井からの生産量を鈍化させ、その結果、米シェ―ル全体の原油生産量が減少していると、考えられます。昨年春以降、原油価格は大きく反発したものの、これらの指標が回復途上にある点(生産力が鈍化している点)に、留意が必要です。

次回以降、OPECプラスの大規模な減産継続について書きます。

図:米国全体および米シェール主要地区の原油生産量 単位:百万バレル/日量


出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。