NY金、ダブルボトム完成

著者:菊川 弘之
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 パウエルFRB議長は8日、国際通貨基金(IMF)のパネル討論会に参加し「景気回復は不均一で不完全なままだ」と述べた。金融緩和の縮小には米経済の一段の改善が必要との見方を示し、米経済の正常化が進むなかでも金融緩和が続くとの見方が強まった。

 3月は米長期金利上昇に伴うドル買いが金の売り要因となったが、過去のドル円は3月のトレンドと4月のトレンドが転換しやすいアノマリーが存在する。更に、日本のGW期間に金融市場が荒れる展開を見せることも、何度となく起きている。

 また金価格が年初から下落基調にあったこともあり、アジアの需要が急回復している。新型コロナウイルスの影響で昨年の宝飾用需要は過去最低となったが、足元で金需要大国の中国・インドの需要が増加している。

 3月のインドの金輸入量が前年同月比471%増の160トンと、過去最高となったと発表。輸入税の引き下げや価格下落を受け、小売部門が積極的に購入した。インド政府は2月、小売り需要の拡大や密輸防止に向け、金の輸入関税を12.5%から10.75%に引き下げていた。5月初旬の「アクシャヤ・トリティヤ」と呼ばれる祭礼(この時に金を買うと縁起が良い)に合わせた輸入が増加した。

 中国でもコロナで大きく落ち込んでいた婚礼用消費が「報復消費」と呼ばれ、急拡大している。5月・6月に結婚を控える婚礼用需要で3月の貴金属店大手の周大福(福建省)売り上げは、前年比2倍になっている。

 今年は共産党創立100周年記念の年であり、建国記念日の7連休には、多くの結婚式や両親の誕生記念日(60歳・70歳・80歳の節目を祝う)が予定されている。これらのイベントに合わせた、ディスカウントキャンペーン(1gにつき30元値引きなど)も実施されていることが消費の後押しとなった。2月の春節の時期に、コロナの影響で観光支出が減少した分、金などの小売りが増加した。

 世界一位・二位の金消費国需要は旺盛だ。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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