REIT指数(後編)―投資対象として株価指数を考える【5】―

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◆REIT指数への投資・先物


 REIT(不動産投資信託)指数への投資を行う場合、浮動投資口ベースの時価総額ウェートに応じて全銘柄を買う方法もありますが、通常は先物やETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)を利用するのが一般的と考えられます。

REIT指数の先物は、同指数算出開始の5年3カ月後となる2008年6月から取引が始まりました。株価指数先物については、下記のURLより「基礎から学ぶ先物取引初心者入門」をご参照ください。

▼基礎から学ぶ先物取引初心者入門
https://fu.minkabu.jp/beginner

ここにはREIT指数先物に関する記述はほとんどありませんが、指数先物を売買する上での基本や注意点は他の株価指数先物と大きく変わりません。とはいえ、取引対象が異なるわけですから多少の違いはあります。以下に、日経225先物と制度概要を比較した表を示しました。


出所:東京証券取引所 東証REIT指数先物より作成 太字はREIT指数先物と日経225先物で異なる点

 この表では、REIT指数先物と日経225先物との制度上の違いを太字にしましたが、大きく異なる点をあえて挙げるならば、限月取引と呼び値の単位ぐらいでしょうか。REIT指数先物は3月、6月、9月、12月のうち直近3限月を取引しますが、日経225先物の取引する限月は6・12月限が直近の16限月、3・9月限が直近の3限月となります。また、REIT指数先物の呼び値は0.5ポイント単位ですが、日経225先物の呼び値は0.5円単位ではなく、10円単位です。

 表の左列中央の「値幅制限」において、原則として四半期ごと(3、6、9、12月)の定期的な見直しが行われる点はREIT指数先物も他の株価指数先物と同じです。現在の呼値の制限値幅などは、以下のURLよりご確認ください。

▼呼値の制限値幅
https://www.jpx.co.jp/markets/derivatives/price-limits/index.html

 

◆REIT指数先物の証拠金


 表の左列下の「証拠金」において、REIT指数先物では証拠金に対して10倍近い金額での取引ができます。例えば、2021年3月22日から3月26日までのSPANパラメーターで、REIT指数先物のプライス・スキャンレンジは21万0500円ですから、証拠金21万0500円を証券会社に預けることで1単位(3月19日の終値1971.5ポイントで買うと仮定した場合の取引代金は197万1500円、ただし手数料と税金は除く)の取引ができます。

証拠金の約9.3倍の取引が可能となり、ダイナミックな投資が行えます。その一方で、相場の変動により証拠金を追加で差し入れる必要が生じたり、証拠金以上の損失が発生する場合もあります。取引の際はこの点に十分ご注意ください。

加えて、証拠金計算に用いるSPANパラメーターは、原則として週次で見直されます。最新のデータは以下のURLから、SPAN関連情報のSPANパラメーターよりダウンロードして確認することができます。

▼JSCC(日本証券クリアリング機構)
https://www.jpx.co.jp/jscc/

もっとも、他の先物やオプションの取引にも言えることですが、必要証拠金は取り扱い証券会社ごとに異なります。取り扱い証券会社はSPAN証拠金に独自の掛け目を用いて、状況に応じて掛け目を変更する場合がありますので、詳細は取り扱い証券各社にお問い合わせください。

 みんかぶ先物では、以下のURLでREIT指数先物の証拠金、ならびに取り扱い証券会社ごとの必要証拠金を掲載していますので、参考にしてください。

▼東証REIT指数先物の証拠金
https://fu.minkabu.jp/chart/treit/span

 

◆REIT指数への投資・ETF


 REIT指数への投資は先物だけでなく、ETFで行うことも可能です。2021年3月19日現在でREIT指数を対象指標とするETFは10銘柄が上場しています。これらはレバレッジ型でもインバース型でもなく、先物型でもありませんので、東京証券取引所は長期投資向けのETFに選定しています。

ただ、これらは信託報酬も、実績の分配金利回りも微妙に異なります。もちろん、この分配金利回りは今後の分配金額や取引価格によっても変わります。これらをご理解の上でご参照ください。


出所:東京証券取引所 東証マネ部 銘柄詳細(2021年3月19日現在)
※分配金利回りは過去1年間の実績分配金額と2021年3月19日の終値から算出しており、将来の分配金額を保証するものではありません。

 

◆REIT指数の特性


 さて、ここでREIT指数の値動きを見てみましょう。REITは不動産の賃貸活動による収益がほとんどですから、株式のように大きな利益成長が期待できるわけではありませんが、安定的なキャッシュフローが期待できるという意味で、債券に近い金融商品と言えます。しかも、REIT指数の分配金利回りは株式配当利回りや債券利回りよりも高いという利点があります。

 そこで、REIT指数と日本の10年国債利回りを比較したのが下のグラフです。不動産投資において金利の低下は有利に働くので、10年国債利回りの軸を反転させています。このグラフをみると、リーマン・ショック以前の米住宅バブル時とコロナショック以降を除けば、これらは概ね逆相関の関係にある、つまり金利が上昇(債券価格が低下)すればREIT指数は低下し、金利が低下(債券価格が上昇)すればREIT指数は上昇しやすい、と言えるでしょう。


出所:refinitiv

 REIT指数を日経平均株価とも比較してみましょう。株式は金利と逆相関の関係にあることが多く、下のグラフを見てもREIT指数と日経平均株価は概ね相関していると言えます。しかし、リーマン・ショック時やコロナショック時といった極端なリスク回避地合いのとき、REIT指数は株式以上の急落に見舞われました。



 極端なリスク回避地合いでREIT指数のボラティリティ(予想変動率)が株式以上に高い理由は流動性の問題かと推察されます。この点は株式や債券に比べてREIT指数の不利な点と言えるでしょう。REIT指数に投資する際は、これらのメリット、デメリットを十分に踏まえた上で検討したいものです。

このコラムの著者

若桑 カズヲ(ワカクワ カズヲ)

証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。