[Vol.975] この5カ月間、金相場は下落するも底割れしていない

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。60.29ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,725.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,530元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年05月限は392.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで554.65ドル(前日比3.25ドル縮小)、円建てで1,961円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月13日 19時59分頃 先限)
6,071円/g 白金 4,110円/g
ゴム 225.1円/kg とうもろこし 31,120円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「この5カ月間、金相場は下落するも底割れしていない」

前回は、「ワクチン登場から5カ月で“患者数3倍”の衝撃」として、先週までの新型コロナの推定患者数について書きました。

今回は、「この5カ月間、金相場は下落するも底割れしていない」として、この5カ月間の金相場の値動きについて書きます。

前回のとおり、ワクチン開発成功後の、世界全体の新型コロナウイルスの感染状況は非常に厳しいと言わざるを得ません。

こうした社会情勢の中、金(ゴールド)価格は、以下のとおり、3月初旬にかけて下落しました。ワクチン登場から3月初旬までの下落について考えられる要因について、以下のように考えています。

・“代替資産”起因 (株高→金安)
ワクチンが登場した11月、市場に存在する期待を巨大に膨れ上がらせる主要国の“金融緩和”が強化されたことや、バイデン氏が米次期大統領になり、国家間のパワーバランスが(少なくとも前政権よりは)安定するとの期待が生じたことなどで発生した、期待先行相場“バイデン・ワクチン相場”による株高が一因とみられる。

・“代替通貨”起因 (ドル金利上昇・ビットコイン高→金安)
その他、米国の金利上昇により、金(ゴールド)の“無国籍通貨(ドルや円などの法定通貨と異なる、国の信用を裏付けとしない通貨)”としての魅力が低下したことや、同じ“無国籍通貨”という特徴をもつビットコイン価格が急上昇したことなどにより、通貨としての金の魅力がそがれたことも一因に挙げられる。

・“有事のムード”起因 (有事ムード後退→金安)
また、90%超の予防効果があるとされるワクチンが登場したことで、2020年3月に新型コロナがパンデミック化して以降、およそ8カ月間、新型コロナが振りまき続けた“不安”が一時的に遠のき、金の“不安拡大時の逃避先”としての魅力が低下したことも、一因に挙げられる。(“安全資産”という単語は、金投資がリスクのない投資だと誤解を与えかねないため、筆者はなるべく用いないようにしている。)

おおまかに3点、ワクチン登場から3月初旬までに発生した金価格の下落について、述べました。株高は“代替資産”の側面で金の下落要因、ドル金利上昇・ビットコイン高は“代替通貨”の側面での金の下落要因、ワクチン登場は“有事のムード”の側面の金の下落要因と言えます。

3つの側面(テーマ)が一様に下落を示したことが、この間、金(ゴールド)相場が下落した背景とみられるわけですが、3月中旬以降は、状況が異なり、強気ととらえられる要素が出始めています。金相場が“1,700ドル底割れ”を起こしていない点です。次回以降、金相場の1,700ドルをキープする力がどこから来ているかについて、筆者の考えを書きます。

図:NY金先物(中心限月 日足 終値) 単位:ドル/トロイオンス


出所:ブルームバーグより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。