制裁期間中のイランで増加する、仕向地不明の原油輸出量

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)小動き。米GDP、FOMCなど主要イベントを控えていることなどで。56.20ドル/バレル近辺で推移。

金下落。ドルインデックスの反発などで。1,416.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。9月限は10785元/トン近辺で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)横ばい。9月限は441.6元/バレル近辺で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで543.3ドル(前日比0.4ドル縮小)、円建てで1894円(前日比21円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(7月26日13時頃 先限)
 4934円/g 白金 3040円/g 原油 40150円/kl
ゴム 183.5円/kg とうもろこし 24590円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「制裁期間中のイランで増加する、仕向地不明の原油輸出量」

前回は「米国の原油在庫と原油生産量を短期的視点で確認する」として、米国の原油在庫と原油生産量の短期的な動向に注目しました。

短期的な変動要因になり得る週次ベースの米原油在庫と原油生産量は減少傾向にあり、原油相場の短期的な上昇要因になる可能性があります。

一方、長期的な原油相場の変動要因になり得る月次ベースの米原油在庫と原油生産量は増加傾向にあり、原油相場の重石の一つとなっています。

今回は米国から離れ、「制裁期間中のイランで増加する、仕向地不明の原油輸出量」として、イランの原油輸出量に注目します。

以下のグラフは、イランの原油輸出量を示したものです。青線が輸出量の合計、赤線が“仕向地不明”の輸出量です。

7月22日、ポンペオ米国務長官が、イランに利することがないよう、同国産原油を輸入しないように呼びかけた、いわゆる“イラン石油制裁”に反し、同国産原油を輸入したとして、中国の国営石油会社に制裁を科すと表明しました。

2019年5月初旬に始まった同制裁において、はじめての制裁実施となったようです。

ただ、中国は以前の制裁の際もイラン産原油の輸入を継続したことがあり、前例踏襲の域を超えないと筆者は感じています。

気になるのは、グラフ内赤線の“仕向地不明”の輸出量です。今回報じられた中国の輸入がこの仕向地不明に含まれている可能性は否定できませんが、昨年11月に石油制裁の猶予期限が設定されて以降、どの国に輸出されたのかが分からないイラン産原油が徐々に増えてきています。

制裁を逃れるために、イラン側が相手を特定せずに輸出の手続きをしている可能性があります。

このような行為は、需給バランスを引き締めるとみられたイラン制裁が、実は仕向地不明の輸出が増えたこをきっかけに逆に需給バランスを緩める、つまり原油相場の下落要因に発展する可能性があり、注意が必要です。

図:イランの原油輸出量 単位:千バレル/日量
イランの原油輸出量

出所:海外主要メディアのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。