[Vol.1000] EもSも、プラチナの上下両方の材料

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。64.83ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,877.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,695元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年07月限は414.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで713.15ドル(前日比5.85ドル拡大)、円建てで2,493円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月24日 18時14分頃 先限)
6,578円/g 白金 4,085円/g
ゴム 250.5円/kg とうもろこし 32,950円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「EもSも、プラチナの上下両方の材料」

前回は、「ESGは全体像をとらえることが重要」として、ESGの全体像を確認しました。前回を含め、今後数回にわたり、コロナ禍で急速に存在感を強めているこのESGという考え方がプラチナ市場に及ぼす影響を考察し、今後の価格動向を展望していきます。

今回は、「EもSも、プラチナの上下両方の材料」として、環境(Environment)、社会(Social)における、プラチナ相場の変動要因を確認します。

以下は、ESGにおける諸項目と関わりが深いプラチナ市場におけるさまざまな要素と、それらが及ぼすとみられるプラチナ相場への影響です。

例えば、E(環境)における温室効果ガス削減という項目は、「排ガス浄化装置を搭載しない自動車が主流になる」という要素と「環境配慮関連の複数の需要が発生する」という要素をプラチナ市場に与え、自然や遺産の保護という項目は「乱獲抑制の動きが強まる」という要素を与えます。

想定されるプラチナ市場への影響は、「排ガス浄化装置を搭載しない自動車が主流になる」という要素は価格下落圧力、「環境配慮関連の複数の需要が発生する」と「乱獲抑制の動きが強まる」という要素は価格上昇圧力、と言えます。つまり、E(環境)は、プラチナ市場にとって一概に、下落要因とも上昇要因とも言えないわけです。

S(社会)も同様で、市民の意識向上により、排ガス浄化装置を搭載しない自動車の一つである「EV(電気自動車)」を重用する動きが強まれば、プラチナ市場に下落圧力がかかりますが、同「FCV(燃料電池車)」を重用する動きが強まれば、上昇圧力がかかると、考えられます。

人権問題や対話重視、開かれた市場・公正な取引において、鉱山労働者の人権を尊重する、生産者側の意向が市場に反映されやすくなる、などの動きが強まった場合、プラチナ市場に上昇圧力がかかると考えられますが、主要生産国の南アフリカでインフラが堅牢になり、鉱山労働に必要不可欠な電力の安定供給が実現して供給懸念が発生しにくくなった場合は、短期的な価格上昇が起きにくくなる可能性があります。

図:ESGとプラチナ市場の関係


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。