[Vol.1001] Gはプラチナ価格の長期上昇要因

著者:吉田 哲
原油反発。米主要株価指数の反発などで。65.62ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,882.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,735元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年07月限は425.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで699.25ドル(前日比7.65ドル縮小)、円建てで2,433円(前日比11円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月25日 19時37分頃 先限)
6,591円/g 白金 4,158円/g
ゴム 255.0円/kg とうもろこし 32,930円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「Gはプラチナ価格の長期上昇要因」

前回は、「EもSも、プラチナの上下両方の材料」として、ESGが世界に浸透する過程で起き得るプラチナ市場への影響について、環境(Environment)、社会(Social)の面で考察しました。

今回は、「Gはプラチナ価格の長期上昇要因」として、残る企業統治(Governance)について考察します。

G(企業統治)については、前々回の「ESGは全体像をとらえることが重要」で述べたとおり、E(環境)やS(社会)に影響を及ぼし得る、「原因」の要素が強いテーマであるため、その動向はプラチナ市場を分析する上で非常に重要です。

前回の図のとおり、鉱山会社が不正防止策を講じ、よりクリーンな会社に変わった場合、労働者、消費者、市場、自社の利益、E(環境)・S(社会)への影響度のバランスを測る動きが強まり、プラチナ市場に上昇と下落の両方の圧力がかかる可能性があります。

鉱山会社については、世界全体の鉱山生産のおよそ6割強を、「Anglo American Platinum」(22%)、「Impala Platinum」(17%)、「Sibanye-Stillwater」(14%)、「Lonmin」(11%)、の4社が占めています。

このうち、「Impala Platinum」と「Sibanye-Stillwater」は本拠地を主要な鉱山生産国である南アフリカ(鉱山生産世界1位。シェアはおよそ72%)に置いています。(いずれも2018年)

新興国の一翼を担う南アフリカの会社として、さらなる発展を遂げるためには、これまで以上に、グローバル化が必要です。グローバル化を進めるにあたり、昨今の社会情勢を鑑みれば、ESGを順守することは必須と考えられます。

これらの会社が、ステークホルダー(利害関係者・利害関係分野)への配慮が進めば、ステークホルダーが広範囲なだけに、先述の通りプラチナ市場には、上昇と下落の両方の圧力がかかる可能性があります。

また、企業に自動車会社を含めれば、より、考慮すべき点が増えます。EV(電気自動車)を流通させたいのか、FCV(燃料電池車)を流通させたいのか、自動車会社の方針次第で、プラチナ市場への影響が変わります。(どちらも「走行時」は温室効果ガスを排出しない自動車です)

日本や欧州のように、水素を主要なエネルギー源とする「水素社会」を模索している国・地域において、それらの自動車会社が国の方針に準拠し、水素を充填し、発電装置の電極部分にプラチナを用いるFCV(燃料電池車)を流通させる策を講じた場合、「プラチナが政府や主要自動車会社からお墨付きを得た」と期待が高まり、プラチナ市場に上昇圧力がかかる可能性があります。(EVのバッテリー調達問題を回避できるメリットもあります)

同時に、政府がFCVに充填する水素を調達するために、電極部分にプラチナを用いる、温室効果ガスを発生させずに水素を生成する装置(グリーン水素の生成装置)を重用した場合はさらに上昇圧力がかかると、考えられます。

自動車会社の中には、水素を化石燃料の代わりに内燃機関で燃焼させて走る自動車「水素自動車」の開発を進めている会社もあります。「水素自動車」に充填する水素はグリーン水素であることが望ましいため、「水素自動車」が普及した場合は、グリーン水素を生成する装置に使われるプラチナの需要が増える可能性もあります。

視点を変えれば、Gはある意味、Government(政府)でもあります。鉱山会社や自動車会社、それを束ねる政府も含め、「G」は、プラチナ市場の動向を考える上で非常に重要な要素だと言えます。

図:「温室効果ガス削減」と期待される各種貴金属の新需要


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。