[Vol.1012] プラチナ相場は風評被害にあっていた!?

著者:吉田 哲
原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.28ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ビットコインの反発などで。1,891.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,005元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年07月限は453.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで735.95ドル(前日比4.05ドル拡大)、円建てで2,495円(前日比13円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月9日 19時11分頃 先限)
6,685円/g 白金 4,190円/g
ゴム 241.0円/kg とうもろこし 35,440円/t

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ相場は風評被害にあっていた!?」

前回は、「原油相場と石油開発会社の株価は連動する?」として、原油相場と石油開発会社の株価の関係について書きました。

今回は、「プラチナ相場は風評被害にあっていた!?」として、フォルクスワーゲン問題発覚から数年間、プラチナ相場が長期低迷したことについて書きます。

足元、プラチナ相場は、NYの先物市場が1トロイオンス1,200ドル前後、大阪の先物市場が1グラムあたり4,200円前後で推移しています。NY市場は2015年2月、大阪市場(当時は東京)は同年7月以来の高値水準です。

ドイツ自動車大手「フォルクスワーゲン」社が、違法な装置を使い、不正に、排ガス浄化装置のテストを潜り抜けていた問題を米環境保護局が公表したのは、2015年9月18日でした。

国内外のプラチナ先物価格は、「プラチナの多くの需要が奪われる」という悲観論が数年にわたり底流するきっかけとなった「フォルクスワーゲン問題」発覚時の水準を上回っているわけです。

問題発覚当時、複数の市場関係者は、同問題の発覚がプラチナ相場を下落させると考えていました。以下の連想が働いたためです。プラチナの全需要のおよそ3割が排ガス浄化装置向け(2019年)であることが、この連想が拡大した最大の要因です。

1. 問題発覚 →
2. ディーゼル車の信用失墜 懸念 →
3. ディーゼル車の排ガス浄化装置に用いられるプラチナ需要減少 観測 →
4. プラチナ価格下落 懸念

以下のグラフは、特に急減すると言われた、プラチナの一大消費地である欧州の自動車排ガス浄化装置向け需要の推移です。3つの機関が公表している同データは、同地区の同需要が急減していないことを示しています。

3つの機関の数値が全く同一でないことから、それぞれの数値はそれぞれの機関の独自の数式(フォーミュラ)で計算されたものであると、考えられます。

同問題が発覚した2015年から2019年までの5年間、プラチナ相場が長期低迷を強いられたことを、「風評被害」とするアナリストがいます。筆者も同感です。

同問題発覚をきっかけとした「プラチナ価格低迷」をイメージさせる連想は、あまりにも連想しやすかったため、市場関係者の間であっという間に広がったと考えられます。データがそれを示していないにもかかわらず、です。

「大衆の連想」がプラチナ相場の頭を重くしたと言っても過言ではありません。わかりやすい話よりも、まず、データに注目することが重要です。

図:欧州における自動車排ガス浄化装置向け需要の推移


出所:WPIC、ジョンソン・マッセイ社、リフィニティブ社のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。