週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.64ドル高の73.38ドル、ブレント原油は2.95ドル高の75.65ドルとなった。

 前週末の海外原油はOPEC関係者が2021年の米石油供給量は限定的との見方を示し、シェール生産の伸び悩みが意識されたことが支えとなり堅調な推移となった。一方でFRBが利上げ時期を早める可能性があるとの思惑からドル高・株安推移したことは重しとなった。

 先週はイラン核合意の再建に向けた協議の停止や米原油在庫の減少などが支えとなる中で引き続き上値を伸ばす展開となった。週明けはイラン大統領選で反米強硬派のライシ司法府代表が当選したことを受け核合意再建に向けた協議が中断となり、イランの早期増産が期待しづらくなったことから堅調な推移となった。また、先週末からのドル高の流れが一服したことも好感された。翌22日は利食い売り優勢となると、OPECプラスが8月以降も増産を続ける見通しとなっていることが上値を抑える格好となり反落した。翌23日はEIA週報において原油在庫が761.4万B減少(予想-412.2万B)と予想以上に減少していたことが好感されたほか、石油需要も2週連続で節目の2,000万Bを上回っていたことが好感され上昇した。週末にかけても引き続き原油在庫の減少や石油需要の堅調さが支えとなったほか、ドイツなど欧州の経済指標が好調な内容だったことから石油需要回復への期待感が高まる格好となり上値を伸ばす展開となった。



 今週の原油相場は引き続き上値を伸ばす展開が想定されそうか。ワクチン接種の普及により石油需要の回復が期待されている一方、供給サイドを見るとイラン核合意再建に向けた協議の停止によりイラン産原油の早期増産も見込めなくなったほか、米シェールオイルも生産者が供給拡大より経営基盤の強化や配当に注力していることや、脱炭素の流れで新規投資が厳しくなっていることから増産は限定的とみられており、需給の引き締まりが予想される。来週のOPECプラス会合では8月からさらに50万Bの増産で合意することが予想されているものの、50万B程度の増産であれば消化可能との見方から予想通りの増産幅であれば再び上値を伸ばす展開に戻ると予想される。一方で増産幅が予想外に大きなものとなれば下振れする可能性もあり、まずは1日のOPECプラス会合を見極めたいところか。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。