週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.76ドル高の75.14ドル、ブレント原油は0.04ドル高の75.69ドルとなった。

 前週末の海外原油は続伸。引き続き経済正常化に伴い、年後半にかけて石油需要回復期待が強く押し目買いが優勢となった。7月1日に行われるOPECプラス会合では減産緩和が小幅にとどまると見込まれていることも支援材料となった。

 先週はコロナウイルス変異株の拡大により調整売りが先行する格好となったが、年後半の石油需要回復期待に支えられる展開となった。週明け28日は反落。東南アジアや英国、オーストラリアの一部などでコロナウイルスの変異株デルタの感染が拡大していることでエネルギー需要の回復ペースが鈍るとの懸念が強まったことやドル高が重しとなった。29日は小反発。OPEC事務局長が、2021年は日量600万Bの需要増加が予想され、うち500万Bが年後半に見込まれると述べたことが支援材料となった。ただ対ユーロでドルが上昇したことや、引き続きデルタ株の感染拡大により景気回復が遅れることへの警戒感は重しとなった模様。30日は続伸。EIA統計で原油在庫が670万B減少となり、6週連続の取り崩しとなったことが好感された。その後はOPECプラスの会合を控えて調整売りに押される展開となった。7月1日は続伸。OPECプラス会合で8~12月にかけて段階的に200万Bの増産を実施する計画が伝わったことが材料。50~100万B増産合意の予想を下回る40万Bの増産計画となった。しかし、サウジとロシアが合意した内容についてUAEが反対しており会合は2日に延期となった。



 今週の原油相場はさらに高値を目指す展開となりそうか。OPEC会合にて12月までで200万Bの増産と単月で40万Bの増産にとどまる見通しであることから、市場予想の8月以降50-100万Bの段階的な増産を下回る見通しである。またOPEC事務局長が言及した年後半の500万Bの需要回復を補う増産が行われないことを考えると、需給はさらに引き締まると思われる。ただUAEがこれに対し反対していることから、合意に至らなければ現行の水準を維持することになる可能性も否定できない。コロナウイルス変異株の感染拡大がドル高が重しとなる可能性もあるが、需給面から下値は限られると考える。WTIで75ドル達成から調整が入れば、引き続き押し目買いで臨みたい。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。