内外共に200日移動平均線を回復(金相場)

著者:菊川 弘之
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 29日に発表されたワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)四半期報告によると、2021年第2四半期(4~6月)の世界の金需要は1年ぶりの高水準となった。中央銀行や投資家による買いが膨らんだ。

 一方、宝飾品製造業は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響から依然として不安定な状況にあり、上半期(1~6月)の金の利用は08年以降の四半期としては最も低い水準だった。

 4~6月期の世界の金需要は計955.1トンと、20年同期(960.5トン)、19年同期(1132.1トン)を下回った。

 1~6月期の世界の金需要は1833.1トンと、20年同期(2044トン)、19年同期(2195.5トン)から減少した。

 金上場投資信託(ETF)による4~6月期の購入は拡大。1~3月期と20年10~12月期には縮小していた。

 中銀による4~6月期の購入は2年ぶりの高水準だった。

 年初にはドルを始めとする基軸通貨に対する不安感から、ビットコインを始めとする暗号資産へ金ETFから資金が流出していたが、中国によるビットコイン規制の動きもあり、金ETFへ資金は還流し始めている。

 長期スタンスの各国中央銀行の金保有量増加傾向は、コロナ対策で急速に膨れ上がった各国の債務問題を意識している側面もあろう。

 パウエルFRB議長は28日の記者会見で、ジャクソンホールシンポジウムに向け、講演原稿を執筆中と明らかにしたことで、これまで以上にジャクソンホールへ市場の関心は向いていく。ジャクソンホールや、9月のFOMCでテーパリングへの道筋を示し、11月FOMCでテーパリング告知、12月FOMCでテーパリング決定、2022年1月テーパリング開始、2023年3Qで利上げと言うのスケジュール感にズレが生じるか否かが今後の焦点。8月に期限を迎える米債務上限問題の行方にも注意を払いたい。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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