[Vol.1047] 社会の変化が五輪選手の女性比率と金相場を変えた

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。73.36ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,827.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。21年09月限は13,420元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年09月限は452.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで777.2ドル(前日比13.6ドル拡大)、円建てで2,708円(前日比14円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月30日 19時20分頃 先限)
6,438円/g 白金 3,730円/g
ゴム 220.0円/kg とうもろこし 34,200円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「社会の変化が五輪選手の女性比率と金相場を変えた」

前回は、「東京2020の金メダルは1個94,000円!?」として、今回の東京大会で授与されている金メダルについて書きました。

今回は、「社会の変化が五輪選手の女性比率と金相場を変えた」として、前々回前回と同様、夏季五輪に係る各種データに注目します。金(ゴールド)相場を分析する際のアイディアを練る上で、これらのデータは確認する意味があると、筆者は考えております。

前々回の「夏季五輪における各種データ」で示したとおり、五輪では女性選手の人数が増加しています。この点を以下のグラフで女性比率として表現しました。また、同時に、金価格の推移を記しました。

1970年ごろから、女性選手の比率と金価格が、勢いを伴って上昇しはじめたことがわかります。2つが相関関係にある(2つが関わり合っている)わけではありませんが、同じ要因で、2つが上昇しはじめたと、考えられます。

その要因とは、社会の変化です。女性選手の比率の上昇は、多様性を重視するムードが強くなったことで起き、金価格の上昇は、世界の経済発展が進み、莫大な資金供給を可能にするため、金(ゴールド)を裏付けとする通貨制度を廃止したことによって起きたと、考えられます。

多様性を重視した社会を実現すること、そして、経済発展を続けることを実現することは、われわれ人類の望みと言えるでしょう。特に多様性を重視した社会を実現することについては、国によって濃淡はあるものの、近年、議論が深まりつつあるように、感じます。

前々回、前回で述べた、五輪の各種資料やデータから、1970年ごろ以降、女性選手の数が目に見えて増え、そして比率が上昇していること、それに伴い、男女混合や女子選手のみの競技や種目が増えて競技数・種目数が増えていることが、わかりました。また、メダルの裏面のデザインを、開催国が選べるようにもなりました。

その意味では、五輪は、多様性を重視した社会を実現したいという人類の望みを、一定程度、体現してきたと言えそうです。政治的な色合いが濃くなったり、扱う資金の額が巨額になりすぎたり、パンデミックなど強い外的要因にさらされ、機動的に方針を決められなかったり、さまざまな課題はあるものの、各種データからは、五輪がここまで紡いできた成果の一部を確認できたような気がします。

ではこのような五輪のデータから得られた考察は、金価格の今後を考えるために、どのように活かすことができるのでしょうか。次回以降、この点について考えます。

図:五輪選手に占める女性比率と金価格


出所:IOCの資料およびブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。