週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比6.04ドル高の73.02ドル、ブレント原油は6.39ドル高の75.53ドルとなった。

 前週の海外原油は大幅反発した。週明けの暴落から自律反発する形で押し目買いが入ると、株高などリスクオンムードにも支えられ急落した下げ幅をほぼ埋める格好となった。

 先週は新型コロナ変異種のデルタ株が世界的に流行していることが重しとなった一方、EIA統計で原油や製品在庫が予想以上に減少しており、コロナ禍でも堅調な石油需要が示されたことが好感され往って来いの展開となると、ほぼ横ばいでの推移となった。

 週明けは米国や中国など石油消費国で新規感染者数が増加傾向にあることが嫌気されたほか、中国が原油高や輸入割当不正使用の取り締まりを強化している影響で中国の原油輸入量の鈍化が警戒され上値重い推移となった。翌27日も引き続きコロナ変異種の感染拡大が重しとなると、FOMCを控えて戻り売り優勢となり軟調な推移となった。ただし、API統計で原油在庫の急減が示されると東京時間にかけては押し目を買われる格好となった。翌28日のEIA統計でもAPI統計と同様に原油や製品在庫の予想以上の減少が示されたことが好感されたほか、FOMCを受けてドル安進行したことが支えとなり堅調な推移となった。週末にかけても原油在庫の減少や米国の旺盛な需要が支えとなったほか、米GDPが予想を下回る内容だったことからドル安進行したことが支えとなり続伸した。



 今週の原油相場はブレント原油で73~78ドル程度のレンジ内での推移が想定されそうか。OPECプラスが8月から日量40万Bの減産縮小を行うものの、世界の原油需要に対して供給が100~150万B不足しているとされていることから需給ギャップを埋めるほどのインパクトはない。また、FOMC以降ドル安・株高と陸巣オンムードが強まっていることも支えとなりそうであり、ある程度の底堅さがみられそうだ。一方で新型コロナデルタ株の世界的流行で原油需要回復への期待感が後退していることやバイデン政権がガソリン価格の高騰是正のため産油国に介入する可能性があるとみられていることは弱材料であり、高値圏では利食い売りや調整の動きが出てきそうだ。また早期に合意がまとまることはないとみられているものの、3日にはライシイラン新大統領就任を控えており、核合意復帰に向けた協議について進展が見られればイランからの輸出増加懸念も強まるため注視しておく必要がありそうだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。