週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比3.61ドル安の69.41ドル、ブレント原油は3.88ドル安の71.65ドルとなった。

 前週末の海外原油は小幅続伸。EIAの週報において原油、製品在庫が減少していたことから引き続き支援要因となった模様。しかし、米国株が軟調であったことやドル高となったことから上値は抑えられる格好となった。

 先週は石油消費国である米国や中国で新型コロナウイルスデルタ株の感染者数が増加していることから、石油需要回復見通しが不透明となり2週間ぶりの安値をつける展開となった。週明け2日は反落。石油消費国である米国や中国でデルタ株が流行していることが相場を圧迫した。中国の月財新製造業PMIや、同月の米ISM製造業景況指数が低下していたことが嫌気された。ただ、イスラエル企業が運航する石油タンカーがオマーン沖で攻撃されたことは支援要因となっている。米国はこの攻撃についてイランによるものであるとの認識を示しており、イラン核合意の修復協議への影響も懸念されている。3日は続落。引き続き米国や中国でデルタ株が流行していることにより、リスクオフムードからドル高が進行したことも圧迫要因となった。その後は米6月製造業新規受注が予想を上回る結果となったこともあり株価が堅調に推移したことや、在庫統計での減少予想から需給引き締まりが意識され安値から切り返す展開となった。4日は続落。EIA統計で原油在庫が予想に反して増加となったことが重しとなった。米ADP雇用統計では予想より大幅に悪い結果となったことでドル安となったが、その後7月ISM非製造業景況指数の良好な結果を受けてドル高に転じた。5日は反発。中東情勢の緊迫化への懸念を背景に買いが入る展開となったが、デルタ株の感染拡大から上値は抑えられた。



 今週の原油相場はWTIで65ドル、ブレントで70ドルを維持できるかが焦点となるか。石油最大消費国である米国と中国で新型コロナウイルス感染拡大が続いていることから石油需要回復への期待感が後退している。これまでの需要超過見通しにより上昇していた流れが変わりつつあり、上値は重くなっていることから調整局面入りも考えられる。中東情勢の緊迫化が下支えとなっているものの、再び高値を目指す買い材料としてはやや物足りない印象を受ける。引き続き米国や中国のコロナ感染状況が変わらず、米国株にも調整が入る展開となると原油の急落も想定されるため高値掴みは避けたいところである。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。