雇用統計を受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 今回の雇用統計後の各市場の反応で、違和感があったのが、米金利の動き。ドル円が、弱気の雇用統計を受けて、出口戦略(テーパリング・利上げ)を急がず、米景気動向を慎重に見極めるとの見方からドル売りで反応したが、本来、相関の高い米10年債利回りは、金利上昇観測の後退での下落ではなく、反対に上昇したのである。

 これは、米国雇用統計では非農業者雇用者が悪かった一方、平均時給が上昇したためであろう。FRBは「インフレは一時的」との姿勢を崩していないが、雇用者数よりも時給上昇の方が影響するかもしれない。

 仮に、今後中期的にインフレ懸念の高まりによる金利上昇となるなら、株価にとっては「悪い金利上昇」となる。金相場は足元では株価との相関の高い状況が続いているが、本格的なインフレ到来となれば、株価との逆相関に戻っていくだろう。

 季節的には、原油市場は世界最大の需要国の米国ドライブシーズンがレーバーデーで終了し、冬季の暖房油需要が始まるまでは、需要の端境期に入る。穀物市場はハーベストプレッシャー(収穫期の下げ圧力)が意識される時期で、それぞれ需給面から下押し圧力がかかる時期で、9月には米連邦政府による失業保険給付への特別加算が終了することで、労働需給のタイト感が緩み、インフレ懸念が後退する可能性もあるが、年末~来年にかけては中東情勢や南米産穀物動向次第では、再度、原油・穀物市場が上昇を再開する可能性はあり、秋の季節的な下げ圧力は限定的になるかもしれない。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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