[Vol.1117] 石油産業に影響を与える「メタン」削減

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。81.06ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,857.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年01月限は14,395元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年12月限は514.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで773.65ドル(前日比4.25ドル拡大)、円建てで2,838円(前日比0円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月12日 17時5分頃 6番限)
6,806円/g 白金 3,968円/g
ゴム 226.6円/kg とうもろこし 38,150円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「石油産業に影響を与える「メタン」削減」

前回は、「農業に影響を与える「メタン」」として、「農業」起因のメタンの地域別排出量について、書きました。

今回は、「石油産業に影響を与える「メタン」削減」として、「燃料の漏出」起因のメタンの地域別排出量について、書きます。

「燃料からの漏出」によって排出されるメタン(CH4)の量は、 [Vol.1115] で示したとおり「農業」に次ぐ、多さです。

これはFugitive Emissionsと呼ばれる分野で、石炭や石油、天然ガスの生産・処理・輸送の際に排出されます。

地域別にみると、下図の通り、ヨーロッパ(石油や天然ガスの生産量が多いロシアや、旧ソ連の産油国が中心)が最も多く、次いで、アジア(化石燃料の輸入・消費が多い中国やインド、石油の生産量が比較的多いインドネシア、マレーシア)からの排出が多いことがわかります。

COP26のリーダーズ・サミットで、バイデン米大統領が提唱した「メタンの削減」は、米国国内の農家の方々や化石燃料に関わる業界にも、影響を及ぼすと考えられますが、農家の方々へは補助金を出すと、バイデン氏は発言しています。

[Vol1116] で述べたの通り、「メタン削減」は、「食」に関わる話です。補助金が付されて生産量が減少した場合、食肉の価格が上昇する可能性があります。

人類は今、ガソリンや軽油由来の二酸化炭素(CO2)排出量を減少させるため、電気自動車(EV)を増やすことに心血を注いでいるわけですが、それは、移動手段の代替を作る、すなわち、移動することを諦めない、ことを前提としています。

ではメタン(CH4)はどうでしょうか。食肉の代替として、大豆などの植物由来の「代替肉」がそれにあたりますが、今のところ、コストや技術などの問題も残っていますし、何より「味」の代替は不可能(本物の肉の味を諦められない)、と感じる人もいるかもしれません。

食べ物の代替品を一般化させることの難易度は、移動手段の代替品を一般化させることよりも、高いと感じます。この点は、「メタン削減」を加速させるために、避けてはとおれない課題と言えるでしょう。過剰に「メタン削減」を推進した場合、社会的混乱が発生する可能性すら、あるかもしれません。

図:メタン(CH4)の「燃料からの漏出」分野起因の排出量 単位:百万トン(二酸化炭素換算)


出所:Climate Watchのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。