[Vol.1930] 出し渋りへの警戒感が長期底上げの主因

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。67.22ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,008.41ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,180元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年05月限は519.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1998.81ドル(前日比13.51ドル拡大)、円建てで9,783円(前日比52円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月14日 19時53分時点 6番限)
14,401円/g
白金 4,618円/g
ゴム 346.5円/kg
とうもろこし 40,000円/t
LNG 2,119円/mmBtu(25年5月限 2月28日18時23分時点)

●NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「出し渋りへの警戒感が長期底上げの主因」
前回は、「金属、エネ、農産物生産国の民主度低下」として、原油・農産物生産国の自由民主主義指数(生産量加重平均)を確認しました。

今回は、「出し渋りへの警戒感が長期底上げの主因」として、原油・銅・小麦の価格推移(2000年を100として指数化)を確認します。

ここまでの数回で確認したとおり、東日本大震災が発生した2011年、この前後から世界で大きな流れが生じ始めました。人類が良かれと思って始めたESGとSNSが思わぬマイナス面を生み、そのマイナス面が資源を持つ非西側諸国の自由度・民主度の低下、引いては世界分裂を加速させたと考えられます。

こうした流れは、長期視点で起きているため、すぐに止めることは困難です。ましてや、良かれと思って作ったことがきっかけであることから、その良かれと思ったことを否定したり、排除したりすることは不可能でしょう。

そう考えると、世界分裂は今後も、長期視点で継続し得る、それはつまり、長期視点で金属や農産物、原油などの主要品目における供給減少懸念が継続し得ることが示唆されていると、言えます。

以下の図のとおり、銅、小麦、原油の価格は長期視点の高止まり状態にあります。2010年ごろから目立ち始めた、非西側生産国における自由民主主義指数の低下をきっかけとした出し渋り・供給減少懸念が、上昇圧力の一翼となっていると、考えられます。

今後、ここで示した品目いずれにおいても、短期的な価格の上下は起き得ます。しかし、長期視点で見れば、底流する供給減少懸念が作用し、高止まりする可能性があると、筆者はみています。

以前の「[Vol.1928] 世界分裂は資源国の『出し渋り』の動機」の、「2010年ごろ以降の世界分断発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景」、で示したとおり、この10数年間で、社会は大きく変化しました。過去の常識で今の相場を分析することは、年々(日に日に)難しくなってきていると、筆者は痛感しています。

ぜひ、投資家を含む市場関係者の皆さんには、今ならではの分析手法を模索することをお勧めします。過去の事例、著名人が言っていること、人気があること(多くの人が好んでいること)だけが、資産形成を成功に導く手段ではないことを、念頭に置く必要があります。

図:原油・銅・小麦の価格推移(2000年を100として指数化)
図:原油・銅・小麦の価格推移(2000年を100として指数化)
出所:世界銀行のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。