週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比4.21ドル安の75.62ドル、ブレント原油は2.29ドル安の79.88ドルとなった。

 前週末の海外原油は大幅下落。欧州で新型コロナウィルスが再拡大していることからリスクオフムードが拡がり、ドル高進行したことが重しとなった。また、米国や中国、日本などが戦略石油備蓄の放出に向けて具体的な検討に入ったと報じられ、大きく売り込まれることとなった。

 週明けは一転、押し目を買われる動きとなる。前週末の流れを引き継ぎ、WTIで一時10月初旬以来の75ドル割れまで下落したものの、その後は買い戻される展開。月~火曜日にかけて、米国を中心とした消費国が石油価格抑制のために戦略石油備蓄を放出することになったものの、需給バランスが供給過剰へ傾くとはみられておらず、またOPECプラスは備蓄放出がなされれば、対応する可能性が高いと伝わったことで急速に値を戻した。来週に控えるOPECプラス会合では、月次で日量40万バレルの増産ペースが調節されるとみられている。24日は、連日の上昇を受けた反動から戻り売り優勢となる。備蓄放出を受けたOPECプラスの反応を見たいとの思惑から様子見姿勢が強まったもの、EIA統計で原油在庫の100万B増加(予想:50万B減少)が示され、下値を支えた模様だ。25日は、米国が感謝祭で休場となり薄商いの中で、アフリカ南部で新型コロナウィルスの新たな変異株が検出されたと伝わったことが重しとなり続落した。新変異株はデルタ株より感染力が強く、ワクチンの有効性が弱まる恐れがあると伝えられており、感染再拡大によって石油需要の回復が鈍化するとの警戒感が強まっている模様だ。



 今週の原油相場は下げ止まりを見極める展開となりそうか。新型コロナウィルスの新たな変異株のニュースがマーケットを席巻しており、原油も下げ幅を拡大している。また米国を中心とした戦略的石油備蓄の放出、世界同時株安、ドル高進行等、外部要因は原油にとっての圧迫材料が目白押しとなっており、これまでの様に大きくは戻しにくそうだ。その他の注目材料としては、12月2日に開催される予定のOPECプラスの閣僚会合であるが、現在の増産計画の修正の可能性が、変異株出現によって高まったと考えられる。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。