[Vol.1136] 環境活動家グレタ氏がいら立つわけ

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。70.83ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,772.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年05月限は14,490元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年02月限は464.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで837.45ドル(前日比1.55ドル縮小)、円建てで3,023円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月10日 17時3分頃 6番限)
6,459円/g 白金 3,436円/g
ゴム 229.0円/kg とうもろこし 37,900円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「環境活動家グレタ氏がいら立つわけ」

前回は、「脱炭素の本質は「脱欲望」」として、今、世界的なブームとなっている「脱炭素」について、筆者の意見を述べました。

今回は、「環境活動家グレタ氏がいら立つわけ」として、現在の「脱炭素」が、ビジネス化していることについて、筆者の意見を述べます。

温室効果ガス排出権の融通は、温室効果ガスを過剰に排出する国や企業が、少なく排出する国や企業から、権利を買い取る行為です。買い取れば、温室効果ガスを基準以上に排出できます。逆に、排出権を売却して利益を上げることもできます。

EV(電気自動車。走行中に二酸化炭素を排出しない)を生産することで、排出権を有することができる米電気自動車大手「テスラ」は、排出権を売却し、大きな利益を得ています。一時は、本業の稼ぎを上回る利益を上げていました。

「脱炭素」は、表向きは、温室効果ガスの排出量を削減し、温暖化を食い止める(産業革命以前の気温に近づける)こととされていますが、今のところ、ビジネス色がまだまだ強いと言わざるをえません。(それゆえ、黎明期・過渡期にあると言える)

さらには、「脱炭素」でも、電力は欲しい、自動車で移動したい、つまり、人類に豊かな暮らしを続けたい、という欲望が残っていることが、現在の「脱炭素」を本質から遠ざけてしまっていると考えられます。

スウェーデンの若い環境活動家がいら立ちをあらわにするのは、大人たちが過剰なレベルの豊かな暮らしを諦めず、脱炭素の本質的な議論が始まらないから、なのではないでしょうか。

では、人類が過剰な欲望を捨てた時、何が起きるのでしょうか。「脱炭素」は、ビジネス色を薄め、排出権価格の下落を促し、本来の目的である、気温の上昇を抑える「本質」に近づくでしょう。この時、人類一人一人が、「脱炭素」を自分のこととして、認識しているでしょう。

とはいえ、人類は、一定程度であったにせよ、豊かさを諦めること(≒生活水準を下げること)は、すぐにはできないでしょう。これこそ、数十年単位の超長期プロジェクトです。このため、2022年も、2020年、2021年と同様、「脱炭素」は黎明期・過渡期の域を脱さないと、言えるでしょう。

図:足元、「脱炭素」がビジネス化している背景


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。