マイナス金利で溢れ出た資金が徘徊する限り

著者:近藤 雅世
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 トランプ大統領はFRBが更に利下げを行うことを強要している。来年の大統領選挙の時に景気が悪化すると選挙戦に悪影響が出るためだという。

 現在日本銀行を初め世界の中央銀行は、金利をゼロ以下の異次元な利率としている。これは、投資家が資金を低コストで借り入れて、新しい事業や企業に投資を促進することを促すためである。問題は新しい魅力的な投資先が見当たらないことである。安部政権の第三の矢が成就していないことが、すなわち世界経済全体の問題となっている。

 銀行に預金をしている超大金持ちは、マイナス金利で金利を支払わなければならなくなっている。今や世界で販売されている債券の25%はマイナス金利だという。数百万ドルの預金を保有する資産家の負担は小さくない。そうした資産家は預金を引き出してどこかに投資する必要があるが、その投資先に困っているものと思われる。資金の一部は安全資産と言われる金や円、スイスフランといった優良資産の購入に充てられている。

 これが金価格が1500ドルを超えている一つの原因であろう。となれば、マイナス金利がプラスとなるまでの間はこの流れが続くかもしれない。先週この稿で、ファンドの買い残が過去2番目に多いので、そろそろファンドが手仕舞い売りをする可能性があると書いたが、底流にある優良な投資先を見つけることのできない資金が世の中を徘徊している限り、ファンドの売りもそうした資金による金買い投資で打ち消される可能性がある。売っても売っても買われるならファンドは再び金を買い持ちするかもしれない。

 中国を初めとする新興諸国の経済が低迷気味で、世界に新たな実需が生まれ難い状態になっている今、潤沢な資金を持った投資家がどうするかを考えれば、金価格は一時的な調整局面があっても、再び買われるかもしれない。

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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