FOMCを受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 ウクライナ情勢の緊張や、英国の政情不安(官邸パーティ疑惑)が欧州通貨売りにつながっていることが金の上値抑制要因となっているものの、200日移動平均線が下値支持として機能中。2021年8月安値を起点とした上昇チャネルも継続しており、押し目買い基調に大きな変化は出ていない。

 北京冬季オリンピックは、2月4日~20日まで北京で開催され、その後、冬季パラリンピックが3月4日~13日まで開催される。北京冬季オリンピックの開幕7日前~パラリンピック閉幕後の7日目まで、国連が武力紛争を控えるよう求める「五輪休戦決議」期間だが、この前後に危機感は高まりを見せるだろう。

 ポーランドやウクライナとの国境に近いベラルーシ西部・南部で、ロシアとベラルーシが、2月10日~20日に合同軍事演習「同盟の決意2022」が実施される。

 ウクライナ情勢をめぐり、アメリカのブリンケン国務長官はロシアがNATO(北大西洋条約機構)をこれ以上拡大させないよう要求していることに対し、応じられない考えを書面で回答したと明らかにした。ロシアのペスコフ大統領報道官は、バイデン米大統領が、プーチン大統領個人への制裁を検討する意向を示したことについて、そうした措置は「政治的に破壊的だ」と批判。双方の主張は平行線のままで、クリミア半島併合時と同様のウクライナ東部併合リスクは高まっている。

 金融制裁の強化は、ロシア・中国などの「ドル離れ・金買い」を加速させる。

 世界貿易機関(WTO)は中国に対し、米国への報復関税発動を認めた。中国が当初要求していた24億ドルを大きく下回る規模だが、米国にとってはインフレ加速要因となりかねず、「悪い金利上昇」「スタグフレーション懸念」「地政学リスク」などが「安全資産」としての金の再評価につながる流れだ。押し目買い戦略を維持したい。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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