ウクライナ情勢とインフレを受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 短期で戦闘が集結するなら、開戦で金や原油が急騰しても、利食いの動きも早いかもしれない。今回の地政学リスクと類似したパターンを振り返ると、

 ソチオリンピックと重なった2014年のウクライナ騒乱で金は上昇したものの、クリミア併合が決定したところが天井でその後反落。

 北京オリンピック開幕と重なったグルジア侵攻は、5日間と言う短期で終わったこともあり、金はほとんど反応なしだった。

 更に遡って1990年代の湾岸戦争時には、イランのクェート侵攻で金は急騰し、その後も開戦観測が高まるたびに押し目を買い直される流れが続いたが、91年1月、いよいよ他国西軍がイラクを攻撃した日が高値で、その日の内に急落と言う流れだった。

 ウクライナ侵攻の可能性は、依然として残ったままと考えるが、全面戦争にならない限り、噴き値では利喰いの動きも出てきそうだ。

 ただし、過去の紛争時と異なり、今回は地政学リスク要因だけで上昇しているのではなく、「インフレ」と言う大きな要因が背後に控えている。米国の1月の消費者物価指数(CPI)は年率で7.5%という40年ぶりのインフレ率となっている。FRBの政策舵取りは、非常に困難であり、インフレリスクとFRBの政策ミスリスクの両方に対するヘッジとして金への資金流入は続き、金は利食いが入っても、「悪い金利上昇」懸念を背景に、戦闘後の押し目は買い拾われるだろう。米金利上昇・ドル高に対しても、NY金の反応度は鈍くなっており、「通貨の顔」よりも「安全資産の顔」にウェイトが高まっている状況だ。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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