ウクライナ情勢とインフレを受けた金相場見通し

著者:菊川 弘之
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 米戦略国際問題研究所(CSIS)は、ロシア・ウクライナ侵攻作戦で6つのオプションを提示した。昨晩の海外市場では、

 ①ウクライナ東部の親露派への支援は継続するが、対米・対NATO(北大西洋条約機構)交渉が成功した場合、地上軍の一部を国境付近から撤退させる。

 が意識されたものの、オプションの②ドネツク・ルガンスクの分離地域に「平和維持部隊」と称してロシア軍を展開させ、ウクライナ政府がミンスク合意(2014・2015年に結ばれた停戦合意)の完全履行に合意するまで居座り続ける。や、③ドニエプル川以東のウクライナ領を占領し、ロシア領として併合する。④ドニエプル川以東に加え、クリミア半島から隣国モルドヴァの分離地域トランスニストリア(沿ドニエストル共和国)までを結ぶ黒海沿岸部一帯を占領し、ウクライナを「内陸国」化するシナリオの可能性が消えた訳ではない。

 外交交渉がまとまらず、ウクライナ領への大規模侵攻が実施された場合、ロシアは侵攻開始と同時に大規模な戦力を一挙に投入して、短期間で戦闘に決着をつけ、早期停戦を図ると思われる。ロシアの財政状況やシリアなど他の地域でも軍事的なコミットメントが続いている現状を考慮すれば、戦争の長期化や広い地域の占領継続といった大きなコスト負担は回避したいはずだ。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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