[Vol.1185] 「戦争」に格上げされたロシアによる軍事侵攻

著者:吉田 哲
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原油反発。ウクライナ情勢の悪化などで。95.17ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,901.70ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は13,870元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年04月限は621.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで841.9ドル(前日比4.4ドル拡大)、円建てで3,171円(前日比16円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月28日 17時41分頃 6番限)
7,043円/g 白金 3,872円/g
ゴム 258.2円/kg とうもろこし-円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「戦争」に格上げされたロシアによる軍事侵攻」

前回は、「原油、金、急騰も、侵攻報道前の水準まで一旦下落」として、ロシア軍のウクライナ侵攻の報道を受けた、原油と金(ゴールド)相場について、書きました。

今回は、「「戦争」に格上げされたロシアによる軍事侵攻」として、ドイツのショルツ首相の発言をもとに、ロシアによるウクライナ侵攻が持つ意味について、筆者の意見を書きます。

報じられているとおり、2月24日(木)、ロシアは軍事侵攻に踏み切りました。それ以降、ロシア軍とウクライナ軍の戦闘がおさまらず、緊迫した状態が続いています。

ロシアの動きをけん制すべく、欧米主要国は、国際送金の情報をやり取りする機関「SWIFT(国際銀行間通信協会)」からロシアの一部の銀行を排除することで合意し、制裁を強化しました。一方、プーチン露大統領は、核抑止部隊に高度な警戒態勢に移行するよう指示するなど、緊張を強める姿勢を崩していません。

ロシアが軍事侵攻に踏み切った2月24日(木)、ドイツのショルツ首相(メルケル氏に代わり2021年12月に就任)は、ウクライナ侵攻を指示したプーチン大統領に対し、「大陸に75年以上なかった戦争を開始したが、彼がその戦争に勝つことはない」と発言しました。

西側諸国(※)を代表するリーダーの一人が、「戦争」という強い言葉を用いたのです。

この発言は、今回のロシアによるウクライナ侵攻について、1.「戦争」に発展する可能性がある、2.第二次世界大戦のように世界の体制を変え得る大きな意味を持つ、3.NATO(北大西洋条約機構。西側諸国の軍事同盟)優位は変わらない、などの意図を含んでいると言えるでしょう。

すでに西側諸国のリーダー達の間に、今回の軍事侵攻を機に、物が壊れたり人が亡くなったりすることに対する覚悟や、これまで世界でさまざまな秩序を脅かしてきたロシアを敗戦国にして、長期的に西側に有利な体制を整える思惑が、存在している可能性があります。

※西側諸国=主に冷戦時(おおむね、第二次世界大戦後からベルリンの壁崩壊まで)、ソビエト連邦(ソ連)や東欧諸国などの社会主義諸国に対して存在した、米国や英国、ドイツなどの西欧諸国、それらの同盟国(日本も)などの資本主義諸国のこと。現在も主要メディアで「西側」と表記されることがある。

図:ショルツ独首相の発言が示唆すること


出所:各種情報源をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。