週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比12.73ドル高の109.12ドル、ブレント原油は14.02ドル高の111.51ドルとなった。

 前週末の海外原油はウクライナとロシアが協議する可能性があるとの報から緊迫感が和らぎ反落となった。しかし週末にイラクの油田が停止し日量50万Bの生産減少となっていることや、欧米諸国がロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除するなど、制裁による混乱で週明けは急騰となった。

 先週はウクライナ情勢への警戒感から堅調に推移していたが、週末にはイラン核合意の再建が間もなくとの報から反落となった。週明け28日は大幅反発。週末の流れを受け堅調に推移したが、ロシアとウクライナの停戦協議が始まったことは上値を抑える要因となった。1日は大幅続伸。ロシアとの取引を縮小・撤回する動きから、同国からの供給が急減し需給がひっ迫するするとの見方が相場を押し上げた。また米国などは6,000万Bの原油備蓄を協調して放出することで合意したが、世界で日量1億Bを消費するなかであまり材料視はされていない模様。朝方に発表されたAPI統計では原油在庫が610万Bの減少となった。2日も大幅続伸。引き続きロシアへの経済制裁の動きからロシア産原油の供給が急減していることが一段高の要因となっている。OPECプラス会合では4月も現行維持の日量40万Bの増産となったが、ロシアの減産に加えて脱炭素の流れからOPECプラスは増産目標を達成できておらず、今後も目標と実際の生産量の乖離が拡大する見通しである。EIA週報においては原油、製品在庫ともに減少となった。3日は反落。イラン核合意の再建が間近とのことでイラン産原油の供給が増えるとの見込みから利食い売りが入る展開となった。



 24日にロシアがウクライナに軍事侵攻をしたことからWTIで100.51ドル、ブレントは105.79ドルまで急騰、2014年以来の高値を付けた。ただ、週末時点では共に高値から一時9ドル近く下落する値動きの荒い展開となった。目先はウクライナ情勢次第で乱高下を繰り返す動きが続きそうだ。ただ、欧米のロシアに対する経済制裁が嫌気され株安、景気後退懸念となるようだとリスクオフの流れとなり原油価格も上げにくくなりそうだ。また、イランの核合意で進展がみられるようだと大きな調整局面を迎える可能性も否定できない。現状は噂で買われて事実で売られる展開ともいえる為、強気一辺倒には注意が必要だろう。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。