[Vol.1949] 原油相場急落で遠のく「掘りまくれ!」

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。60.69ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,216.46ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年09月限は14,955元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年05月限は472.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2283.26ドル(前日比36.71ドル拡大)、円建てで10,607円(前日比93円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月11日 15時08分時点 6番限)
14,859円/g
白金 4,252円/g
ゴム 297.9円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,097円/mmBtu(25年7月限 3月21日17時47分時点)

●NY原油先物 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「原油相場急落で遠のく『掘りまくれ!』」
前回は、「OPECプラスが自主減産縮小を前倒しした背景」として、主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格を、確認しました。

今回は、「原油相場急落で遠のく『掘りまくれ!』」として、米シェール最主要地区「パーミアン地区」の掘削済井戸数と原油相場を、確認します。

米国の事情を確認します。米国にある五つのシェール主要地区のうち、最も原油生産量が多いパーミアン地区(テキサス州とニューメキシコ州にまたがる地区)に注目します。

同地区の原油生産量は米国全体のおよそ48%です。足元の生産量である640万バレル/日量は、イランやイラク、UAE(アラブ首長国連邦)などの名だたるOPECの産油国を上回る規模です。

トランプ氏の「掘って、掘って、掘りまくれ!」の号令の下、リグ(井戸を掘る掘削機のこと。原油生産を行うポンプではない)をフル回転させて掘削済井戸数を増やそうとしたとしても、以下のグラフのとおり、原油相場が急落している状況では、実現が難しい可能性があります。

原油相場が2013年から2014年前半の水準である120ドル近辺に達すれば、パーミアン地区の掘削済井戸数は、毎月600基程度に達する可能性はあるかもしれません(足元450基程度)。

「掘りまくれ」は、原油価格が高い水準であることが前提になっている可能性があります。現在のように、原油相場が急落している状況では「掘りまくれ」を実現し、米国の原油生産量を飛躍的に増やすことは難しいでしょう。

トランプ氏がけしかけた関税戦争により、各国の主要株価指数が軒並み急落し、不安が拡大する中、原油相場が急落すれば不安は解消される、というシナリオが各所で浮上しています。

今後、株とともに急落する可能性が大いにあります。ですが、この数回で述べたとおり、原油は原油で、OPECプラスの巧妙な生産調整と米国の生産現場の状況により、それほど下がらない可能性もあります。今後株価が急反発した場合、原油も急反発する可能性もあります。

原油相場は世界の景気動向だけでなく、米国やOPECプラスなどでの産油状況に強く影響を受けています。幅広い視野で原油相場を見守る姿勢が重要です。

図:米シェール最主要地区「パーミアン地区」の掘削済井戸数と原油相場
図:米シェール最主要地区「パーミアン地区」の掘削済井戸数と原油相場
出所:EIA(米エネルギー省)のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。