週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比13.38ドル安の99.03ドル、ブレント原油は15.70ドル安の103.59ドルとなった。

 前週末の海外原油は反発。EUがロシア産エネルギーの禁輸で合意できなかったことや、ロシア-カザフスタン間のパイプラインが一部再開したことは圧迫要因となった。しかしサウジの石油施設がフーシ派からミサイル攻撃を受けて火災が発生したことで供給懸念が相場を押し上げた。

 先週はロシアとウクライナの停戦合意期待や米国のSPR放出報道で急反落となった。

 週明け28日は大幅反落。中国でオミクロン株が再拡大しており、上海で都市封鎖が始まるなど石油需要の下振れが意識された。OPECプラスが生産目標の拡大ペースを維持する見通しであることは支援要因となっているが、ロシアとウクライナの停戦協議が再開することは重しとなっている模様。29日は続落。停戦協議が前進したことに加え、引き続き中国でのオミクロン株拡大が圧迫要因となっている。翌、30日は反発。ロシアとウクライナの早期停戦に懐疑的な見方が根強いことに加え、EIAの週報で米原油在庫が-344.9万Bと供給不足見通しが相場を押し上げる要因となった。31日は米国が過去最大級のSPR放出を発表したことで大幅反落。OPECプラスが増産目標を据え置き、IEAのデータを今後利用しない方針を決め、西側諸国との関係悪化を懸念して値を戻す場面はあったが、手仕舞い売りが加速する流れとなった。米国のSPR放出は5月より6か月間、日量100万Bの計1億8000万B、IEA加盟国も追加で3000~5000万Bを放出する見通し。



 今週の原油相場は目先、下値探りの展開か。ウクライナ情勢は引き続き注目されるが、新鮮味を欠いており停戦合意等の大きな進展がないと材料視されにくい。米SPRの放出に加えIEA加盟国の在庫放出が正式決定されると供給不足懸念が後退して3月中旬の安値を試す可能性も想定される。ただ、ロシアは4月1日より天然ガスの代金をルーブルで払わなければ供給を停止すると通告しており予断を許さない情勢でボラティリティの高い相場展開となりそうだ。米国SPRの放出は目先の需給バランスには寄与するものの、構造的な供給不足の解消とはならないことから、大きく押した場面では引き続き買いが優勢となる展開を予想する。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。