[Vol.1211] 触媒向け需要は急減していなかった

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。欧州のロシア制裁強化の報道などで。102.86ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,926.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は13,845元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年05月限は677.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで952.05ドル(前日比2.35ドル縮小)、円建てで3,846円(前日比5円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月6日 17時53分頃 6番限)
7,649円/g
白金 3,803円/g
ゴム 265.1円/kg
とうもろこし 52,900円/t
LNG 4,200.0円/mmBtu(22年6月限 4日午前9時13分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「触媒向け需要は急減していなかった」

前回は、「古い常識:プラチナ触媒需要は急減する」として、まことしやかに語られた、プラチナの触媒消費急減→価格暴落説について書きました。

今回は、「触媒向け需要は急減していなかった」として、古い常識(プラチナの触媒消費急減→価格暴落説)に関連する、自動車排ガス浄化装置向け需要の動向を確認します。

以下の図のとおり、プラチナの全需要に占める自動車排ガス浄化装置向け需要は、急減していません。問題発覚直後の2016年、2017年は逆に増加しています。2018年と2019年は緩やかに減少しましたが、「古い常識」によって語られた急減は起きていません。

2020年の減少は、新型コロナのパンデミック化により世界的に自動車の需要が減少したためですが、2021年は回復、2022年はさらに回復することが見通されています(World Platinum Investment Councilの見通し)。

自動車排ガス浄化装置向け需要が急減していないにもかかわらず「急減する」と言われてきた2015年以降、プラチナ相場は、「古い常識」起因の下落圧力にさらされ、リーマンショック直後の安値水準を這いつくばるように、推移してきました。

「古い常識」が台頭し、プラチナ相場は辛酸をなめてきたわけですが、統計では、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の動向がプラチナ相場の足かせになる理由はほとんどなかったわけです。本当の足かせは「古い常識」起因の風評被害だったのかもしれません。

自動車1台あたりに使われる排ガス浄化装置向けの貴金属の量(プラチナ、パラジウム、ロジウムの合計 筆者推計)は、年々増加傾向にあります。自動車の生産台数が減少したり、環境配慮に適合した次世代車(燃料電池車や電気自動車など)が注目を集めたりしても、増加傾向にあります。

自動車会社や部品を製造する会社が、世の中の排ガス規制の厳格化に対応すべく、排ガス浄化装置の有害物質を除去する性能を向上させ続けていることが要因であると、考えられます。

自動車の生産台数が減少したからといって、必ずしも、排ガス浄化装置向けの貴金属の需要が減少するとは限らないのです(「古い常識」にとらわれた人は、この考え方が欠けていた可能性がある)。次回以降、プラチナの「新しい常識」について、書きます。

図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移 単位:千オンス


出所:WPICのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。