[Vol.1213] 超長期の積立投資になじむのがプラチナ

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。96.86ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,931.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は13,535元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年05月限は624.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで968.85ドル(前日比6.15ドル縮小)、円建てで3,893円(前日比27円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月8日 大引け 6番限)
 7,683円/g
白金  3,790円/g
ゴム  263.0円/kg
とうもろこし  52,980円/t
LNG 4,200.0円/mmBtu(22年6月限 4日午前9時13分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「超長期の積立投資になじむのがプラチナ」

前回は、「新常識:「脱炭素」起因のプラチナ需要が増加する」として、プラチナの超長期的な需要増加期待について、書きました。

今回は、「超長期の積立投資になじむのがプラチナ」として、前回までに述べたプラチナの「古い常識」と「新しい常識」をもとに考えられる、プラチナ積立の有用性について書きます。

前回までの数回で、「古い常識」の衰退がはじまり、「新しい常識」が芽生えつつある、プラチナを取り巻く環境の変化を確認しました。こうした環境の変化は、プラチナ相場を超長期的視点で、上昇に導く可能性があると、筆者は考えています。

「新しい常識」は、いずれ本流になると考えていますが、現時点で、そのタイミングを見定めることは困難でしょう。まだまだ「古い常識」が市場を支配する可能性もあります。このため、30年先の2052年をいったんのゴールとし、現在の価格であるおよそ4,000円/グラムを起点に、以下の図のとおり、3つの超長期的な上昇パターンを描いてみました。

仮に、この超長期的上昇局面を、シンプルで人気がある手法である「プラチナ積立」で活用した場合、資産の額は以下のように推移します(毎月1万円を積立てた場合。売買手数料は当社のルールに準じ、買付け時に1.65%(税込)を適用)。

投資額は合計360万円(1万円×360カ月)でした。2052年3月で決済した最終的な損益は、パターン1が+69万円、パターン2が+71万円、パターン3が+76万円でした。積立投資は「保有数量」と「最終的な価格」によって損益が大きく変動することが、わかります(価格だけが重要事項ではない)。

パターン2やパターン3は、最終的に、順調に価格が上昇したパターン1を上回る利益を出しました。積立を開始した後、価格が横ばいでも価格が下落しても、最終的に価格が一定程度上昇していれば利益をあげることができます。パターン3が示す通り、取引開始の価格水準に回復していなくとも、です。

価格が今、急上昇している銘柄は耳目をひくため、心理的に手掛けやすいかもしれません。しかし、こと積立投資の場合、最終的に価格上昇が起きるのであれば、取引期間中の価格下落は「保有数量を増やす要因」となるため、歓迎される要素と言えます。

「今は上昇しない、今後上昇しそう」という値動きは、「古い常識」に支配されて上昇しない傾向が続いているものの、「新しい常識」によって今後上昇しそう、というこれからのプラチナの環境そのものと言えるでしょう。

これからのプラチナは、他の急上昇している銘柄に比べて、積立投資に適している可能性が高いと言えるでしょう。「プラチナ積立は大器晩成型」と言えるかもしれません。

今のプラチナは、イケイケで上昇している華々しい銘柄と一線を画す、目立たない、暗い存在に見えるかもしれません。しかし、20年後、25年後に、「新しい常識」に支えられて価格が大きく上昇した場合、それまで「古い常識」によってもたらされた苦労や強いられた我慢(価格低迷=保有数量増加)が、豊かな果実となって返ってくるわけです。まさに「大器晩成」と言えるでしょう。

今月より、激動の世の中を本格的に歩み始めた新社会人の皆さんは特に、今すぐに成功することよりも、超長期的な人生のイメージを持つようにするとよいと筆者は思います。力をためていた時間が長ければ長い程、数十年後に飛び跳ねた時、その高さは大きくなると思うからです。

[Vol.1209] 「プラチナ婚式」もあり得る。節目でプラチナが登場」で述べたとおり、プラチナはさまざまな場面で人生をともにしてくれます(プラチナ会員、プラチナの宝飾品、プラチナ婚など)が、とりわけ、これからの「プラチナ積立」は「大器晩成」を実現できる可能性があるため、わたしたちの人生の「大器晩成」と歩調が合う可能性があります。

新社会人の皆さんもプラチナも、目先は忍耐や我慢が必要かもしれませんが、数十年後、ともに、きっと華やかな世界にいると、筆者は思います。積立をしながらプラチナと一緒に苦楽をともにする(プラチナを人生のお供にする)ような感覚で、プラチナ積立をご検討いただいては、いかがでしょうか。

図:プラチナ価格(税抜)の推移と今後のイメージ3パターン 単位:円/グラム


出所:国内大手地金商の価格をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。