[Vol.1214] 西側諸国も原油価格高止まりに加担!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。95.72ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,959.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は13,540元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年05月限は624.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで966.1ドル(前日比3.9ドル縮小)、円建てで3,914円(前日比17円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月11日 17時56分頃 6番限)
7,871円/g
白金 3,957円/g
ゴム 264.1円/kg
とうもろこし 54,300円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「西側諸国も原油価格高止まりに加担!?」

前回は、「超長期の積立投資になじむのがプラチナ」として、前回までに述べたプラチナの「古い常識」と「新しい常識」をもとに考えられる、プラチナ積立の有用性について書きました。

今回は、「西側諸国も原油価格高止まりに加担!?」として、足元の原油価格が高止まりしている背景について、筆者の考えを述べます。

原油相場は、ロシアのウクライナ侵攻後、一時130ドルを超えました。その後反落するも、100ドル近辺の高水準で浮遊する展開が続いています。この間、主要国が相次いで石油の備蓄を放出することを表明しましたが、原油相場は急落していません。

2月27日(日)に西側諸国(欧米とその同盟国)がロシアを国際的な銀行決済システムから排除すると宣言しました。それ以降も、西側はロシアにとって不利な状況を作るべく、さまざまな制裁を講じてきました。ロシア産のエネルギーを買わないことも、その一つです。

そうした西側の動きに呼応するように、ロシアは制裁への応酬を始めました。3月8日、プーチン大統領は「原材料」を非友好国に輸出することに制限をかける命令に署名。3月14日にロシア政府が署名した内容は、穀物を旧ソ連諸国に輸出しないというものでしたが、もともとの命令は、「原材料」(エネルギーも金属も含むとみられる)を対象としていました。

また、ロシアは、外国がロシアから物を買う際、ロシアの通貨であるルーブルで決済するよう、要求しました。急落したルーブル相場を回復させるための措置と言われていますが、それ以外に、事実上「ロシア産資源を同国国外に出さなくする措置」という意味があると、筆者はみています。

西側とロシアの「制裁の応酬」は、世界全体でロシア産資源の流通量が減少する懸念を増幅させ、原油(原油だけでなく、穀物や金属も)の価格を押し上げる要因になっていると考えられます。

一方、西側諸国が中心となり、石油の備蓄を放出して、需給ひっ迫を回避しようとする動きが目立ち始めています。IEA(国際エネルギー機関)は4月7日、加盟国が協調して石油備蓄を追加で放出すると発表しました。

米国はすでに1億8000万バレルを放出することを表明しており、それと合わせて合計2億4000万バレルの石油備蓄を放出することになりました。放出する期間は5月ごろから半年間とされています。備蓄放出は、需給ひっ迫を回避する策であり、原油相場に下落圧力をかける要因です。

下図のように、ウクライナ侵攻開始以降の原油市場に存在する「上昇要因」と「下落要因」を確認すると、西側諸国とロシアの原油市場への関り方が見えてきます。

西側諸国は「上昇・下落両方」の要因に関わり、ロシアは主に「上昇要因」に関わっていると言えるでしょう。西側諸国の原油市場に対するスタンスが複雑である点が、「備蓄放出」決定でも、原油相場がなかなか下落しない一因になっていると筆者は考えています。

図:ウクライナ侵攻後、原油相場が「浮遊」している背景


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。