[Vol.1218] 情勢緊迫が長期化すれば原油高も長期化か?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。EU諸国によるロシア産原油の禁輸報道などで。106.51ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,972.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は13,370元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年05月限は686.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで981.4ドル(前日比13.7ドル縮小)、円建てで4,079円(前日比70円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月15日 13時57分頃 6番限)
8,042円/g
白金 3,963円/g
ゴム 266.5円/kg
とうもろこし 55,300円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「情勢緊迫が長期化すれば原油高も長期化か?」

前回は、「「鎖国」できるロシアの狙いは混乱の長期化?」として、ロシアという国の豊かさや諸品目の自給率について、書きました。

今回は、「情勢緊迫が長期化すれば原油高も長期化か?」として、緊迫化した情勢が長期化した場合に、原油相場の高止まりが長期化する可能性について、書きます。

4月7日の国連総会で採択されたロシアの人権理事会の理事国資格を停止する決議では、賛成が多数を占めたものの、3月24日の人道状況の改善を求めた決議に比べ、賛成票が激減し、棄権と反対が急増しました。

この点は、世界全体で、ロシアの蛮行を否定する動きが鈍くなってきていることを意味し、混乱が、長期化する可能性が高まりつつあることを示唆しています。(ロシアや中国がアフリカや中東諸国などに、事前に根回しをしたとの報道もあります)

ロシアは今、西側諸国に制裁を科されたり、西側などとの交易を自ら手控える措置を講じたりして、「鎖国」状態に入りつつあります。

ロシアが意図的に「鎖国」をし、混乱を傍観する姿勢を示したり、国際社会がロシアを否定する動きが鈍くなったりしているなど、事態解決への道筋は、日に日に険しくなってきていると言えるでしょう。

また、IEAが公表した備蓄放出期間である「半年」にどんな意味があるのでしょうか? 半年でウクライナ情勢を鎮静化させる具体策があるのか、半年であれば備蓄を放出しても持ちこたえられるのか(半年が限界?)、半年後に中間選挙が行われるが、強い策を講じているアピールや石油票の取りまとめなど、選挙戦を有利に戦うためなのか、これらはどれも、西側(特に米国)の都合です。

相手は蛮行をいとわないロシアです。今後も情勢が悪化するか鎮静化するかは、先に攻撃を行い、「鎖国状態」に入りダンマリを決め込みつつあるロシア次第という構図が続くとみられます。西側の都合である「半年」はむしろ、西側が薄氷の上にあることを暗に示しているようにすら、感じます。

ロシアがいたずらに混乱を長引かせた場合、原油価格の高止まりも長引く可能性があります(混乱を長引かせることが目的になりつつあるとすら、感じます)。何とか糸口を見つけなくてはなりません。

油田の探索・開発、掘削装置の開発・提供など、直接的に生産に関わる「川上」部門が主要な収益セグメントの企業の株価は、原油価格に連動しやすい傾向があります。

図:WTI原油価格とINPEX(1605)の株価


出所:マーケットスピードⅡのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。