[Vol.1228] 鳥になって「俯瞰(ふかん)」しよう

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。104.38ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,885.01ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 労働節のため休場(5月2日~4日)

上海原油(上海国際能源取引中心) 労働節のため休場(5月2日~4日)

金・プラチナの価格差、ドル建てで951.86ドル(前日比33.49ドル縮小)、円建てで4,024円(前日比31円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月2日 16時34分頃 6番限)
7,863円/g
白金 3,839円/g
 ゴム(まだ出来ず)とうもろこし 58,100円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「鳥になって「俯瞰(ふかん)」しよう」

前回は、「原油相場と石油関連株」として、原油相場と石油関連株の推移について書きました。

今回は、「鳥になって「俯瞰(ふかん)」しよう」として、前々回の「[Vol.1226] 「現在の常識」を深く理解する方法」で述べた、「材料の俯瞰(ふかん)と影響力の足し引き」について、詳細を述べます。

現在の市場を正しく分析するためには、「材料の俯瞰(ふかん)と影響力の足し引き」は欠かせません。そしてそれを求めるためには、「過去の常識」をある程度否定し、「現在の常識」への理解を深めることが欠かせません。

以下は、「現在の常識」の柱である「材料を俯瞰(ふかん)すること」「抽象度を高めること」についてのイメージ図です。金(ゴールド)相場の場合です。

鳥が上空より、地上の隅から隅までを見下ろしています。これが「全体を見渡す=俯瞰(ふかん)」です。何を俯瞰しているのか? それは、3つの時間軸に分けた7つのテーマです。7つのテーマは金(ゴールド)市場に関わるほとんどの変動要因(材料)を網羅できる、抽象的なキーワードでできています。

最近の金(ゴールド)の値動きを見ていると、一つの問いが浮かんできます。「ドル高でもなぜ金(ゴールド)相場が上昇しているのか?」というものです。これは、ウクライナ危機勃発後の動向をもとに立てられたものであるため、時間軸としては「短中期」にあたります。

鳥の図で述べた短中期のテーマには「有事ムード」「代替資産」「代替通貨」の3つがあり、これらを使い、この問いに答えます。

3つのテーマそれぞれから圧力が同時にかかり、それらが相殺(そうさい)され、結果的に上昇していると考えられます。「ドル高(テーマは代替通貨)」のみに注目すれば価格は下落することになりますが、「有事ムード」も「代替資産」も考慮すれば、上昇していることを説明できます。

また、最近の原油の値動きを見ていると、一つの問いが浮かんできます。「OPEC増産でもなぜ原油相場が上昇しているのか?」というものです。これは、時間軸は金(ゴールド)と同様、短中期です。テーマは「産油国の政情」「産油国の政策」「需要動向」の3つです。

3つのテーマそれぞれから圧力が同時にかかり、それらが相殺され、結果的に上昇していると考えられます。「OPEC増産(テーマは産油国の政策)」のみに注目すれば価格は下落することになりますが、「産油国の政情」も考慮すれば、上昇していることを説明できます。(「需要動向」も下落圧力を生み出している)

材料を、抽象度を高めたいくつかのテーマに分類し、影響度の足し算引き算を行うことで、問いに回答することができました。材料を点で見る傾向があった「過去の常識」が語られた時代にはなかった発想だと思います。

上記より、「現在の常識」の柱である「材料の俯瞰と影響力の足し引き」を実施するための手順は、以下のように示すことができます。

「現在の常識」の柱「材料の俯瞰と影響力の足し引き」の手順
1. 値動きに関わる、複数の抽象的なテーマを設定(時間軸別)
2. 材料をテーマごとに分類
3. それぞれの材料起因の上昇・下落圧力を足し引きする

図:「材料を俯瞰(ふかん)すること」「抽象度を高めること」のイメージ図


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。