[Vol.1232] 金(ゴールド)の新たな超長期変動要因

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。102.87ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,848.93ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は12,780元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年06月限は661.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで881.23ドル(前日比12.57ドル縮小)、円建てで3,754円(前日比7円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月11日 17時27分頃 6番限)
7,699円/g
白金 3,945円/g
ゴム 249.3円/kg
とうもろこし 57,700円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 7日午前8時59分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「金(ゴールド)の新たな超長期変動要因」

前回は、「「資本主義への攻撃」ロシア100年越しの大願!?」として、ロシアのウクライナ侵攻が「資本主義への攻撃」である可能性について、考えました。

今回は、「金(ゴールド)の新たな超長期変動要因」として、西側のパラドックス起因の弱点を突いたロシアのウクライナ侵攻が「資本主義への攻撃」である可能性があることが、金相場に与える影響について、考えます。

「西側のパラドックス」は、人間の欲望を糧に膨張しているため、膨張することはあっても収縮することはないと、みられます。つまり、西側の弱点が小さくなる日は来ず、そこを突いたロシアの攻撃は終わらない可能性があるわけです。

この「西側のパラドックス起因の不安」は、以前の「[Vol.1222] ドル建て金(ゴールド)の7つのテーマを確認」で述べた金(ゴールド)市場をとりまく7つのテーマのうち「超長期」のテーマに分類できます。「ハイブリッド戦起因の超長期的に底流する不安」と同じ扱いです。

また、しばしば、足元の景気に不透明感がある理由は、「ウクライナ危機」と「米国の金融引締め」の2つだ、という解説を目にします。2つの理由は並列の関係にあると言っているわけですが、筆者はこの点ついて異なる意見を持っています。

並列ではなく、直列。順番は「ウクライナ危機」が先(主)で「米国の金融引締め」が後(従)です。2つは一部、因果関係にあり、ウクライナ危機の激化が米国の金融引締めを加速させている側面があると、考えます。

ウクライナ危機が激化すれば、ロシアがエネルギー、食糧、金属などを、同国とベラルーシが化学肥料などを出し渋り、インフレがさらに加速。それに呼応して米国が金融引締め策を強化する可能性があります。

ウクライナ危機が終わらなければ、米国の金融引締めは終わらない、ウクライナ危機の継続は、多重不安の継続を意味する、ということです。「根底にある材料」という意味で、目下、ウクライナ危機は現在の「材料の王様」と言えるでしょう。では、その材料はいつまで王様の座に居座り続けるのでしょうか。

前回の通り、ロシアが今回のウクライナ侵攻を、「資本主義への攻撃」と位置付けているのであれば、終戦までの道のりは長く困難なものになる、つまり、ウクライナ危機が長期的に王様の座に居座る可能性があると言えます。

図:金(ゴールド)市場に関わる7つのテーマ


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。