[Vol.1234] 「化学肥料」不足懸念が食糧危機を引き起こす!?

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。106.69ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反落などで。1,820.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は12,835元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年06月限は690.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで877.7ドル(前日比15.5ドル縮小)、円建てで3,651円(前日比27円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月13日 17時21分頃 6番限)
7,520円/g
白金 3,869円/g
ゴム 241.2円/kg
とうもろこし 57,740円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 7日午前8時59分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:セント/ブッシェル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「新しい常識」で見るほど金価格は超長期的に上昇!?」

前回は、「「新しい常識」で見るほど金価格は超長期的に上昇!?」として、現在の金(ゴールド)相場を考察する上で、社会学の要素を考慮する「新しい常識」を踏まえることの意味を考えました。

今回は、「「化学肥料」不足懸念が食糧危機を引き起こす!?」として、ウクライナ危機が化学肥料不足を、引いては食糧危機や政情不安を引き起こす可能性があることについて、書きます。

足元、トウモロコシは800セント前後、小麦1200セント前後で推移しています。これらは、史上最高値水準です。新興国が台頭し、世界的に需要が急増して付けた、リーマンショック直前や、2010年に発生したウクライナでの大干ばつを受け、ロシアとウクライナが輸出禁止策を行った時よりも高い水準です。

実は、化学肥料の価格も上昇しています。ウクライナ侵攻前に比べると+16%前後です。ロシアとその同盟国であるベラルーシは、世界屈指の化学肥料の輸出国で、カリ肥料については、カナダに次ぐ2位3位で、合わせれば世界全体の20%弱を占めます。ロシアとベラルーシは、カリ肥料の原料となるカリウムを含んだカリ鉱石の主要な生産国です。

西側の経済制裁への報復で、これらの国々が化学肥料の出し渋りをした場合、世界的な肥料不足に陥る可能性があります。ロシアとベラルーシから化学肥料を輸入しているのは、ブラジル、中国、インド、アメリカなど、世界屈指の農産物大国です。エネルギーだけでなく、農産物の生育に欠かせない化学肥料の供給懸念が、いままさに生じている点に留意が必要です。

2010年から2012年ごろまで発生した、北アフリカ・中東地域における民主化運動の波「アラブの春」は、穀物価格の上昇による民衆の不満の蓄積が一因とされました。今、世界的に農産物価格が上昇している。政情不安が各地で起こる可能性がある点に注意が必要です。

ウクライナ情勢の悪化がきっかけで、農産物や化学肥料の価格が高騰していますが、今後も、ウクライナ情勢の動向により、左右される展開が続く可能性があります。同情勢が沈静化しない限り、高止まりが続く可能性があります。

以下の通り、化学肥料に関連する国内外企業の株価が、ロシアのウクライナ侵攻直後から騰勢を強めています。ロシアとベラルーシが出し渋りをして世界的に化学肥料が不足する懸念が、こうした企業のビジネスが活発化するとの思惑を生んでいるためだと、考えられます。

図:サカタのタネ(1377 東証P)とニュートリエン(NTR NYSE)の株価


出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。