減産順守率上昇は、数字のトリックだった!?③

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油(WTI先物)反落。主要株価指数の反落などで。54.49ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,540.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年01月限は11,935元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。19年10月限は429.6元/トン付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで599.6ドル(前日比1.9ドル拡大)、円建てで2,028円(前日比19円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(9月3日 18時11分頃 先限)
 5,210円/g 白金 3,182円/g 原油 35,290円/kl
ゴム 164.1円/kg とうもろこし 22,900円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「減産順守率上昇は、数字のトリックだった!?③」

先週公表された7月のOPECプラスの減産順守率について、「減産順守率上昇は、数字のトリックだった!?①」と「減産順守率上昇は、数字のトリックだった!?②」で書きました。

今回は「減産順守率上昇は、数字のトリックだった!?③」として、減産のルール変更前(期間A)とルール変更後(期間B)の、具体的な2点を比較します。

2017年1月から2018年12月まで(期間A)と2019年1月から現在まで(期間B)において、両方の期間で絶え間なく減産を行っている国(減産免除になったり、期間途中から減産に参加したりしていない国)は8つあります。

この8カ国の、生産量の上限、目標削減量、生産量合計、実際の削減量、減産順守率の各項目について、生産量合計が同じだった、期間A内の2018年1月と期間B内の2019年7月を比較します。ともに生産量は、合計日量2334万バレルでした。

また、両月の削減量は(期間Aは原則2016年10月の生産量を基準、期間Bは原則2018年10月の生産量を基準)、日量120万バレル程度と、ほぼ同じでした。期間A・期間Bともに、減産の基準となる生産量がほぼ同じであることがわかります。

生産量合計、実際の削減量がほぼ同じであるにも関わらず、減産順守率(筆者推定)は、2018年1月が107%、2019年7月は163%でした。この差は何なのでしょうか?

それは、2018年12月の総会で行われた減産のルール見直しが原因です。

表の上部のとおり、見直しによって、期間中の生産量の上限が約40万バレル引き上がり、目標削減量が約40万バレル引き下がりました。

このため、期間Aよりも期間Bの減産の条件の方が“緩く”なったと言え、その結果、同じ生産量・同じ削減量でも、減産順守率に大きな差が出ているのです。

減産順守率の高さに惑わされてはいけない、ということです。

図:OPEC内で2017年1月以降、継続して減産を行ってる8カ国の生産状況
単位:万バレル/日量
OPEC内で2017年1月以降、継続して減産を行ってる8カ国の生産状況

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。