週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.15ドル安の107.03ドル、ブレント原油は3.19ドル安の108.62ドルとなった。

 前週末の海外原油は続伸。米雇用統計後に米国株が下落したものの、EUのロシア産原油締め出しの動きや、9日のロシアの戦勝記念日に向けてウクライナ情勢がさらに激化するとの見方から買いが優勢となった。

 先週は、週前半は中国のロックダウンにより石油需要の落ち込みが意識されたが、後半にかけてはEUのロシア産原油禁輸の動きから供給ひっ迫が意識され値を戻す展開となった。週明け9日は大幅反落。上海や北京で新型コロナ感染対策が一段と強化され、石油需要の落ち込みが意識されたほか、エネルギー株やハイテク株が下落したことでリスク回避の動きが広がる格好となった。10日も続落。中国のロックダウンの影響により同国4月の貿易収支が大きく悪化したことや、インフレや金利上昇が主要国に与える影響も不安視されていることが重しとなった。また米株価も上値重く、ドル高も圧迫要因となった模様。11日は大幅反発。EUがロシア産原油や石油製品の禁輸に向けた取り組みを続けていることや、EIA週報において製品在庫の減少が続いていることが相場を押し上げた。ドライブシーズンを控えてガソリン在庫は過去5年のレンジを下回っているが、製油所稼働率が高まっておらず、在庫の取り崩しが続いている。12日は続伸。ロシアが西側諸国に対する報復制裁としてパイプラインを通じた天然ガスの供給を減らしており、エネルギーを武器として利用し始めたことが相場を押し上げた。またフィンランドやスウェーデンが数日中にも北大西洋条約機構(NATO)加盟申請をする見通しであることが地政学リスクを高めている。



 今週の原油相場はWTIで100ドル~110ドルのレンジ相場見通し。材料的にはここ数週間変化なくロシア産エネルギー品の締出しによる供給懸念と世界的な景気減速懸念による需要後退が綱引きの状態。目先はフィンランドのNATO加盟表明によるロシアの報復活動や16日のEU外相会合でロシア産原油の段階的な禁輸を含む包括制裁案が合意されるようだと、一時的に上振れする可能性がある。ただ、外的要因で株安、ドルインデックス高とリスクオフの流れもあり原油単独の上げ相場も限定的とみる。中国のロックダウンが解除されるまでは、需要回復期待による上昇トレンドとなるのは時期尚早と予想される。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。