[Vol.1251] 消費国とOPECの思惑は食い違っている

著者:吉田 哲
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原油反発。OPECプラス増産への不透明感などで。118.64ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,849.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は13,195元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年07月限は753.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで838.8ドル(前日比25.1ドル拡大)、円建てで3,698円(前日比16円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月7日 17時41分頃 6番限)
7,847円/g
白金 4,149円/g
ゴム 259.0円/kg
とうもろこし 55,220円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「消費国とOPECの思惑は食い違っている」

前回は、「OPEC増産報道で急騰した原油と石油株」として、6月2日に行われたOPEC・非OPEC閣僚会合前後の原油相場の推移、その後の石油株の推移について、書きました。

今回は、「消費国とOPECの思惑は食い違っている」として、「増産決定」についての、消費国側とOPECプラス側の思惑の相違について、筆者の考えを述べます。

6月3日、複数の主要メディアは、「なぜOPEC増産で原油相場が急騰したのか?」という問いの答えを、「西側の制裁によりロシア産原油の流通量が急減して引き締まる世界の需給バランスを緩ませるには、今回決定した増産量では不十分であるため」と述べました。

また、「昨年夏以降、一向に聞き入れてくれなかった増産要請を、OPECプラスはようやく受け入れてくれた」「OPECプラスは、消費国への配慮を強めるよう、方針を変えてくれた」とも、述べました(原油相場が下落していなくても、方針転換だけで歓迎された)。

こうした釈然としない状態を説明するには、そもそも消費国とOPECプラスの「増産決定」に対する認識が全く異なることに着目する必要があります。

高インフレ状態から早く脱したい消費国は「OPECプラス増産決定」の見出しを歓迎しました。この「歓迎ムード」は、消費国側の売り圧力を弱め、原油相場が急騰することを許す、直接的な要因となったと筆者はみています。

一方、OPECプラスですが、「増枠分の一部は前借り」「生産量増加の保証なし」「ロシアに不利な行動はしない」という、会合での決定事項などから推測される3点を考慮すれば、今回の決定は、場当たり的で、実現できない自覚がある可能性があることが浮かび上がります。

図:「増産決定」の認識の違いと原油急騰の背景

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。